ぼくとー旅行記

どんなに些細な距離であっても、非日常がそこにあるならそれは旅行である。

宇宙よりも遠い場所(1)――国立極地研究所

初稿: 2024/02/18

2018年3月31日 (B2)

宇宙よりも遠い場所

 『宇宙よりも遠い場所』(そらよりもとおいばしょ、略称『よりもい』)は2018年冬クール放送開始のオリジナルアニメ。キャッチコピーに「女子高生、南極へ行く」とあるように、女子高生4人が南極を目指すストーリー…とここだけ切り取ると荒唐無稽なトンデモアニメに見えますが、そこは作中でも「南極なんて行ける訳がない」と何度も言及される通り、等身大の女子高生が協力して夢に向かう姿が、コミカルに時にシビアに描かれた名作です。この涙あり笑いありの物語は海外でも評価され、ニューヨークタイムズの「2018年のトップ10ベストインターナショナルドラマ(The Best International Shows)」に選出されるほど。ニューヨークタイムズさんの調査範囲の広さに感服です。

 かれこれ5年以上前の作品ですが、ちょくちょく再放送がされるなど未だに人気な本作。なんと最近ではNHKで再放送中です。是非見てね!!

yorimoi.com

 私もこの作品が5本の指に入るレベルで大好きでして。BD-BOXも購入してしまいました。「感動した」という声も多いですが、私が一番ハマったのは「旅行のワクワク感を丁寧に描いている」ところ。第一話から田舎者が一人で東海道新幹線に乗る不安と昂揚感が描かれ、最終話のタイトルは「きっとまた旅に出る」。刺さりまくりですよ、こんなん。個人的「見たら旅行に行きたくなるアニメ」No.1です。旅行好きな皆さん、是非ご覧になって下さい。

 という訳で、大好きな本作の聖地巡礼に行ってみました。といっても南極まで行けないので、第3話でも登場の国立極地研究所へ。ちょうど春休みだったところに、コラボイベントが開催されたので、ナイスタイミングです。

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ホリデー快速ビューやまなし:新宿(0902)~立川(0929)

小淵沢

 さて朝早くから新宿駅へ。臨時快速「ホリデー快速ビューやまなし号:小淵沢行」に乗っていきます。特別料金不要の列車といえど、小淵沢まで客を運ぶ長距離速達列車。停車駅は「三鷹・立川・八王子・高尾・相模湖・大月・勝沼ぶどう郷・塩山・山梨市・石和温泉甲府・韮崎・小淵沢」と特急もびっくりの快足ぶりです。

 ちなみに少し到着時間が早いにも関わらず、立川までの僅か30分弱にわざわざこの列車を選んだ理由は、よりもいの主人公の一人の名前が「小淵沢報瀬」だから。この列車に乗ってるオタクも多いだろう…と予想していたのですが、車内は普通に山梨まで行く旅行客が多かったです。短区間乗車で、すみません……。

網棚すら置けぬ車内

 車両は今は亡きオール2階建て電車の215系E1系E4系Maxといい「ラッシュであっても何としてでも座席を用意してあげたい」というJR東日本の思いから生まれた車両ですが、今度はドアが足りずに乗降に時間がかかりすぎて遅延の原因になる…という悲しき結果となりました。私の記憶では東海道線快速アクティーのイメージですが、晩年はこうして、座席の数を活かしたホリデー快速運用が多かったと思います。

「ビュー」の名に違わぬ景色

 今回は自由席の2階に乗り込みます。狭いボックス席ですが、2階からの眺めは「ビュー」の名に恥じない車窓です。山梨の方まで行ったら絶景なんでしょうね。今回は立川で降りたけど。乗車率は6割程度でしょうか。流石はオール2階建て。これに追加料金なしで乗れるのだから乗り得ですね。

 中央特快もびっくりな速度で駅を飛ばして30分弱、名残惜しいですが立川駅で下車します。215系もレアな車両でしたから、もう少し乗っておけばよかったです。

国立極地研究所(南極・北極科学館)

「研究所」って感じの看板

 「国立極地研究所」と言いますが、最寄り駅は国立駅ではなく、その一つ隣の立川駅。モノレール沿いに歩いて2,30分でしょうか。今回の目的地の国立極地研究所に到着です。郊外の開けた道に、晴れた春の日差しが心地良かったです。

まさかのコラボ

 案内に従っていくと、開けた倉庫(?)に特設の物販コーナーが。すでにオタクの行列ができていました。1000円ごとに抽選券が貰えるとのことで、皆思い思いにグッズを購入していました。その後の抽選会は開けた広場(ヘリポート?)で行われたのですが、大盛り上がりの謎に一体感のあるイベントになってました。オタク恐るべし。私ですか?当然外れましたが。

展示品ではないコンテナが、逆にそそります

 まあ欲しいグッズは売り切れないでしょうから物販は後回しにして、特設の展示コーナーを見ていきます。これもたぶん倉庫みたいな場所でした。

等身大パネルがお出迎え

 倉庫内は「よりもい」の展示のほか、(一般向けの)研究紹介のパネルもあり、学会のポスター発表のように職員の方が質疑に答えていました。アニメオタクVS極地オタクの構図です。とはいえオタクが多くてなかなか話しかけられませんでしたが。

作中でおなじみ、たぶん使う機会のない知識

5 mルールを体験できるシュールな展示

 学術的な展示ばかりではなく、監督のコメントなどアニメ側の展示ももちろんあります。が理系大学生の身としては、極地に関する展示にも見入ってしまいました。よりもい見る前から、一度行ってみたかったですからね、極地研究所。

活動紹介パネル

アニメスタッフのコメント

 ストーリー紹介のパネルも続きます。内容としては公式ホームページの次回予告欄と一緒なのですが、こうしてパネルとして現実に存在されると、つい見てしまいますね。

ここからストーリー紹介。ここに来ている方には不要でしょうけど(笑)

今回描き下ろしの背景で記念写真が撮れました

キャストサイン入りのコラボポスター

 アニメ関連の展示も勿論ですが、流石は極地研究所。実際に使われてる装備品とかが展示されていて中々面白かったです。これらグッズと共に、南極で過ごすのですね……。

実際に使われたテント

昭和基地の模型にもキマリ達が。芸が細かい

 続いて南極・北極科学館へ。ここでは常設で極地に関する展示がされています。劇中でキマリ*1達が見ていたのもこれですね。

例のコンパス

 展示物の隣には、劇中カットのパネルが併設されているなど、オタクに優しい仕様。劇中のシーンを思い出しながら、実物を観察することができます。キマリ達と同じ感想を抱ける…かは分かりませんが、同じように見学ができる夢のような時間です。

実物の雪上車~劇中パネルを添えて~

 主人公たちも興奮していた、実際に使われていた雪上車も展示されています。頑丈な車体とキャタピラが、南極の過酷な環境を物語ります。なんだか戦車みたいです。

車体側面

 そしてなんとこの雪上車、劇中での彼女たちと同じように中に乗り込むことができます。勿論乗ってみましょう!

いざ中へ
車内で生活できるようになっています

 車内にはコンロやベッドが完備。長距離移動も考え、生活しながら探索できるような装備です。とはいえ狭いですけどね。

運転台

 目印も道も何もない雪原を進む雪上車。車の外では生きていけないことを含めて、まるで陸を進む船のような装備です。中に入った感想としては、短距離なら乗ってみたいですが、数日も乗り通すのは厳しいかな……。

ハッチからの景色。戦車みたい

 そしてこの南極・北極科学館の目玉といえば、この南極の氷。何と実際に触ることができます。

目玉展示

 パッと見、雪の塊のようですが、流石は南極でしっかり固まった氷です。ザラザラとした雪塊とは異なり表面は滑らかで、どこかつぶつぶした触感が広がります。これだけでも行ってみる価値はあると思うので、是非訪ねてみてください。

みんな氷にペタペタ
多摩都市モノレール:高松~立川南

なんだか大学のキャンパスみたいで気持ちが重くなります

 展示を一通り見終えたところで、極地研を後にします。抽選は外れたことだしね。

 帰りは最寄りのモノレール駅から多摩都市モノレールに乗りました。

多摩都市モノレール
おわりに

ホリデー快速おくたま

 もともと南極に対する(小学生的な)興味があったからでしょうか。この極地研究所の展示はどれも知的好奇心を刺激するものでした。子供も面白いでしょうが大人でも楽しめるような展示ばかりで、行って良かったイベントだと思います。もともと聖地巡礼するようなオタクは、「キャラの過ごした環境を知りたい」人間だと思うので(個人の感想です)、極地の環境を紹介する極地研との相性は最高だったのではないかと思います。そして理系の大学院に在籍する人間としては、アニメを通じてこうして活動内容を知ってもらえるというのは嬉しいことなんじゃないかな、と思います。有機化学をやるアニメ、できないかな。

 駆け足でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。興味を持ったら「よりもい」を見てくださいね!

*1:主人公:玉木マリ