ぼくとー旅行記

どんなに些細な距離であっても、非日常がそこにあるならそれは旅行である。

ゆきぐにビューーン!

初稿: 2024/2/4

2023年12月27日14:15 (D2)

 JR東日本で今最もアツい(当社調べ)、6000 JREポイントでどこかへの往復新幹線のガチャを無料で回せるきっぷこと「どこかにビューーン!」。ようやく行けるタイミングがあったので申し込んでみました!というのが前回のお話。リセマラが大変でした。

bokutou-travel.hateblo.jp

あゝ日本のどこかに

 この4駅の中から、目的地が抽選で決定されます。どこになるのだろう……期待に胸を膨らませながら過ごしていると、翌日には【どこかにビューーン!】行き先決定のご案内という件名なるメールが。いよいよ来たか、ドキドキ。意を決してメールを開くと……。

 

 

どこかにビューーン!をご利用いただき、ありがとうございます。
行き先が決定しましたので、下記URLよりご確認ください。
※今後、行き先駅についてのご案内が届く場合があります。本メールをお受取り後、お早めに行き先駅をご確認ください。

 という文面と共に、URLとご丁寧に申込時の行き先候補駅(北上・飯山・秋田・新青森)が。くっ…演出家め。行き先が決まるこの瞬間を、すいぶん勿体ぶってくれるじゃあないですか。ある旅行全体を通して意味一番盛り上がる瞬間ですからね、JR東日本は分かってらっしゃる。一人で消化するには勿体ない興奮です。

 深呼吸をして、いざ。下部に記載されたURLをタップします。

あたらしい目的地は……新青森で~~~す!

 手の込んだモーションと共に、現れる八甲田丸。そう、今回の行き先は、東北新幹線の終点*1こと新青森駅です。八甲田丸は在来線で一駅隣の青森駅だけどネ。6000ポイントで東北新幹線の端から端まで行けるなんて、かなり当たりなんじゃないでしょうか。というわけで、旅程を決めて、宿を押さえて、使う切符を探します。この旅程を詰める時間が、旅行の醍醐味ですよね。

今回使う企画乗車券たち

 まずは、今回の旅行を支えてくれたおトクなきっぷ(企画乗車券)を紹介します。自身の旅程にピッタリな切符を見つけたときの快感といったら格別です。良い切符があれば、動きやすさが段違いですから。

JRE POINT 特典チケット (どこかにビューーン!): 6000ポイント

 運よく新青森駅を引き当てたわけですが、では具体的にどの新幹線が当たったのでしょうか。新青森の時点ではやぶさ号は確定な訳ですが、何時の列車なのでしょう。さっそく確認してみましょう。

はやぶさ1号とはやぶさ60号

割り当てられた列車

 行きは「はやぶさ1号」(東京0632→新青森0949)、定期はやぶさのトップナンバーです。……って朝早っ!だからこそ列車が空いていて、充当してもらえたのかもしれません。まあ6000 ptで新青森往復させてもらえるんですから、贅沢を言ってはいけませんね。こうなること覚悟の上で、出発時刻の時間帯を「06:00~09:59」に選択したのですから。滞在時間を長く取れると思えば、遅い時間よりは全然いいです。実は東京以北に在住の方は、発着駅を東京にした上で上野(・大宮)を使えば若干ゆっくりできるという裏技があります。帰りはいい感じの時間帯な気がしますが、意外とこの時間帯は人気がないのでしょうか…?それとも本数が多いとか??

 列車の変更は不可ですが、座席位置の変更だけはできるので、早速えきねっと上で好きな座席を選びます。そして乗車券となるsuicaを登録すれば、準備完了です。ちなみに細かいですが、本切符は「どこかにビューーン!」と表記される模様。「えきねっとトクだ値」みたいなものです。正式名称は「JRE POINT 特典チケット (どこかにビューーン!)」*2らしいですが…。さらに料金である往復6000 ptの内訳は、往路3005 pt, 復路2995 ptとのこと。微妙に差をつける必要はあったのでしょうか。

システム上のどこかにビューーン
五能線フリーパス: 3880円

www.jreast.co.jp

 運行系統上の五能線…というか「リゾートしらかみ」が走る区間が乗り降り自由な切符。なので弘前~青森も乗り放題です。「どこかにビューーン」には付帯していない、新青森~青森間も有効なので相性抜群。しかも有効期間は2日間と、おあつらえ向きの切符です。これだけついて、お値段たったの3880円。ちなみに秋田→青森の乗車券を五能線回りで普通に購入すると4510円……あれ……まあ東京から来る人は盛岡→秋田→川部→新青森→盛岡とかで乗車券を買うのかもしれませんけどね。

 発売箇所はフリーエリア内ですので、新幹線を降りてすぐ、新青森駅(or秋田駅)で購入しましょう。

シンプルながら力強い切符
デジタル版あきたホリデーパス: 2440円

www.jreast.co.jp

 秋田県内のJR線および秋田内陸縦貫鉄道由利高原鉄道が1日乗り放題な秋田県内最強の切符です。これだけついて、お値段たったの2440円。ちなみに秋田内陸縦貫鉄道の一日乗車券は2500円……あれ

 弱点は土休日にしか使えないこと、そして秋田県内でしか購入できないこと。……ですが「TOHOKU MaaS」内でのデジタル版なら、スマホさえあればどこでも事前購入可能です。なので、切符が残らないデメリットはありますが(真のデメリットは電池切れの恐怖)、今回は事前にデジタル版を購入しました。どうせどこからでも買えるなら、全国の指定席券売機えきねっととかで切符版も購入できるようにしてくれればいいのに……。ところでMaaSとか盛んに言うけど、以前と比較して大して便利になってないよね?

2024年1月13日

はやぶさ1号:東京(0632)~新青森(0949)

暗闇に輝く八重洲

 という訳で年が明けて、早朝の東京駅です。6時だと日もまだ昇っておらず、真っ暗闇。そもそもまだ新幹線も動いてないのに、新幹線メインのターミナル駅である東京駅に(しかも改札外にも)多く人が居るのは何処から来たのだろう…と思ったのですが、夜行バスで東京に到着した人々なのですね。夜行バスは時間が読めない(早着する場合もある)ので、みな時間を調整しようと開いている数少ない店舗に押しかけています。一昔前なら寝台特急で東京入りしていたのでしょうけどね……。時代の移り変わりを感じます。これから朝イチで某ネズミ王国へ出国するのでしょう。

号数がみな若い

 早朝はやはり号数の下一桁も若い番号ばかりです。その中でもやはり、百の位・十の位に番号を有さない「1号」の文字が輝いています。JR東日本の新幹線のメインを張る東北新幹線、そのフラッグシップたる「はやぶさ号」のトップナンバーは、秋田新幹線こまちを従えて新函館北斗へ向かいます。

 こんな朝早い新幹線なんて利用者少ないだろう…と思いながら改札口へ向かうと、スキー用具を抱えたたくさんの人々が。なるほど、スキー客でこの時間帯でも混み合うのですね。発車案内を見ると「ガーラ湯沢」の文字もあります。

車両は当然E5系

 一番列車だからかはやぶさ1号は比較的停車タイプで、停車駅は上野・大宮・仙台・盛岡*3と二戸・八戸・七戸十和田新青森奥津軽いまべつ木古内新函館北斗です。いわて沼宮内ェ……。珍しい奥津軽いまべつ停車列車ですが、今回の旅行はJR東日本管内である新青森までです。残念。

 このように、東北新幹線最速種別である「はやぶさ号」といっても、その停車駅はまちまちです(基本的に盛岡以南は(上野)・大宮・仙台・盛岡で統一されていますが…)。東海道新幹線と違って盛岡以北の本数が限られ、基本的に追い越しが起こらないが故の命名でしょう。ちょっと前まで、「Maxとき」と「Maxたにがわ」が連結してたのが最たる例ですね。しかし東海道・山陽新幹線に慣れている身としては、東日本の行き先別列車名は分かりづらいんですよね……。方面なんてそれこそ列車名ではなく行き先を見れば済むことだし。…て愚痴はまた後半で。

サンライズはやぶさ

 新幹線は17両で東京を出ると、上野の地下を抜け大宮に停車。ここまではミニ新幹線のように余力を残した流し運転ですが、大宮を出ると制約から解放され*4、気持ちよさそうに加速を始めます。そんな活き活きとしたE5系を、昇りたての朝日が照らします。さて、寂しい地下の上野駅は、今や大宮と東京に挟まれた中途半端な感じで一部通過列車さえ存在する駅ですが、意外と乗ってくる人がいて「北の玄関口」の意地を見せつけていました。

シンカンセンスゴイカタイアイス

 栃木県に入りうとうとしていると、東海道では絶滅した車内販売が回ってきたので例のカタイアイスとコーヒーを購入。東海道と違いゴミ袋はくれませんでしたが、まあ車内にゴミ箱あるしそこまで困りません。アイスは相変わらず固いですが、まだまだ青森までは時間があるので気長に待ちます。東京~名古屋でのタイムアタックも今となっては良い思い出ですが。コーヒーは酸味が強め。私個人としては、東海道新幹線のコーヒーの方が好みでした。
 東海道に引き続き山陽新幹線でも(普通車の)車内販売の廃止が発表された一方、一度は車内販売を縮小したものの再度復活した東日本。両新幹線では性格が異なるので一概に比較はできませんが、利用者としてはやはり車内販売が回ってくると嬉しいですね。特に東北新幹線は乗車時間が長いことが多く、途中で飲食物を買い足したくなりがちですし。車内販売を廃止しても、せめて自動販売機くらいはどこかに設置しておいてほしいものです。

福島に止まるはやぶさ

 宇都宮を通過し、国内最速の320 km/hでスイスイ走って…と思っていると減速度を感じ、窓の外を見やると景色の流れが遅くなっていきます。「もしや…?」と思って場所を確認すると福島県。なるほど。

 やがてはやぶさは福島駅手前で完全に停止し、車掌から「上りつばさ号の待ち合わせ」とのアナウンスが。予想通り、つばさ号の遅れが響いている*5ようです。しかし朝一番なのにもう遅れてるとは……。冬の東北新幹線のダイヤは大変ですね。山形新幹線福島駅の新アプローチ線の早期開通が望まれます。

盛岡付近は雪景色

 やまびこ・つばさとすれ違うと、はやぶさも再出発。回復運転もこめてトップスピードで仙台へ。約5分遅れで仙台を出発すると、はやぶさは全速力で盛岡を目指します。気づくと窓の外は雪模様。320 km/hで雪が車体に叩きつけ、パタパタと音を立てます。盛岡では乗降が済み次第速やかにこまちを切り離し、慌ただしく青森県へ向かいます。ここから先は260 km/h制限の整備新幹線区間E5系も心なしか不満気に、淡々と走っていきます。流石は320 km/h対応車両、260 km/h程度の速度では揺れもほとんどなく車内は静かです。そのまま最東端の新幹線駅*6を経て、結局2分遅れで新青森駅に到着。当駅で乗務員は交代し、車内販売の人も降車します。ここから先は北海道新幹線、課金が必要です。今回の行き先は新青森までですので、下車して北の大地へ向かうはやぶさを見送ります。降りた瞬間、ホームに吹き込む冷たい空気に、全身で東北の冬を感じました。

2面4線のポイント融かすスプリンクラー
新青森駅

最近の整備新幹線駅って、どこも似たような駅舎ですよね

 新青森駅の改札を出ると、前述の五能線フリーパスを指定席券売機で購入してエスカレーターを降ります。建物を出ると一面雪。そう、この景色が見たかった。美しき白磁の世界。冬の東北に来られて本当に良かったです。住みたくはないけど。

 ふかふかの新雪にテンションが上がりますが、流石に寒い。凍えながら急いで駅ビルに戻り、カフェへ入店。遅めの朝ご飯というかおやつに、コーヒーとアップルパイを頂きます。やっぱり青森に来たらりんごを食べたくなりますよね。コーヒーの深みが、しゃきしゃきとしたりんごの甘みに良く合います。

アップルパイ、美味でした
奥羽本線新青森(1045)~鷹ノ巣(1228)

遅れてきた青森行

 不足分の弘前~大館の乗車券を別途購入した後、五能線フリーパスを改札に通して在来線ホームへ。ホームの端には雪が積もりとても寒いですが、ホーム上待合室のエアコンは故障している模様。この先の区間も雪が酷いらしく、反対方向の奥羽本線青森行(N30編成)は遅れて到着していました。というか線路が雪に埋まっていて全然見えないんですが……。

普通 秋田行

 とまあ呑気に見ていましたが、単線の奥羽本線のこと。冷静に考えれば青森行が遅れると対向の秋田行も遅れるわけで。乗る予定だった普通秋田行は4分遅れでの到着です。あの、次は5分乗り換えなんですけど……。

 とはいえ天候は少し回復して、陽射しが見えてきました。真っ白な雪に、701系の赤紫の帯が良く映えますね。電車でGO!でよく見たやつです。いかにも東北って感じがして、非日常感を増してくれます。といっても異国感があるのは701系の外見だけで、乗ってみると既視感…そう懐かしき209系を思い出す車内です。しかし窓の外に流れる景色は、209系からじゃ見られそうもない雪国の光景で、雪が田んぼを埋め尽くした白い世界の中を列車は淡々と西へ走ります。弘前へ近づいてくると、窓の向こうには白粉を塗った美しい山。旅行客とおぼしき人と共に、美しい津軽富士をカメラに収めます。窓が汚くてあまり綺麗に撮れませんでしたが……。

津軽富士こと岩木山

 弘前で運転士が交代し、車掌も降車。ここから先はワンマン運転のようです。一気に地方感が増してきました。ローカル線らしく単線をのんびり…かと思いきや、流石は本線。風切り音を感じるレベルでぐんぐん飛ばし、雪原を疾走します。種別は「普通」なのに津軽湯の沢糠沢駅を通過しながら、鷹ノ巣駅には遅れも回復して到着。途中の大館駅でも停車時間があったので、そこでも短縮したのでしょう。県境越えは利用客も少なかったですが、秋田県に入って大館からは結構客が乗ってきたように思えます。待合室で石油ストーブに当たっていたのでしょうか、大館からの乗客がみな灯油の香りを漂わせていたのが北国らしく、印象的でした。

JR鷹ノ巣駅秋田内陸縦貫鉄道鷹巣駅は繋がっています
秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線鷹巣(1233)~阿仁合(1331)

701系を見送って

 JR鷹ノ巣駅ホームを秋田方へ歩いていくと、そのまま秋田内陸縦貫鉄道鷹巣駅のホームに繋がっています。まあ元はといえば同じ国鉄*7ですしね。線路も繋がっていますし。

単行気動車がローカル感を醸し出します

 ホーム上には、秋田内陸縦貫鉄道の駅員さんが立って、乗り換え客の乗車券の有無をチェックしていました。スマホで堂々とあきたホリデーパスを表示して秋田内陸縦貫鉄道のホームに入場。原色のAN-8800形気動車が待ち受けます。

この路線図のプリントも、小さいながら嬉しいです

 乗り換え時間も短いので早速乗り込んでみると、キハ120形のような安っぽい簡素な設備かと思いきや、ボックスシート・トイレはもちろんのこと、車端部には充電用コンセントまで設けられているなど、長距離運用に見合うかなり気合の入った内装です。第三セクターだからといって、侮れませんね。

雪原を抜け川を跨ぎ林を抜け

 軽快気動車はエンジンを呻らせ鷹巣駅を出ると、辺り一面に広がるのは真っ白な雪景色です。加速を止めエンジンを切ると、しんと静まりかえった世界にレールの音が染みこみます。やがて人の気配が消え、並行する道路すら無くなると、川を跨いで森の中へ。鉄道以外では立ち入ることすらできない、秋田内陸線からでしか見られない景色です。一歩間違えれば遭難しそうなこの銀世界を堪能できるだけでも、秋田内陸線に乗る価値はあります。

川面も綺麗

 気動車に揺られること小一時間、秋田内陸線の一大拠点・阿仁合駅に到着です。青空の陽射しを照り返す輝かしい雪景色に、途中思い出した頃に行われる列車交換がいいアクセントになって、飽きを感じさせない道中でした。

まもなく、阿仁合
秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線阿仁合(1343)~角館(1510)

見渡す限りの白の世界

 阿仁合駅は一面二線のホームですが、車両基地が併設され秋田内陸線の重要な拠点です。流石は「秋田内陸」と言うべきか、雄大な山々が目前に広がります。

ここまで乗った車両も引き上げていきました

 深々と積もった雪はふわふわで、ぐぐっと踏み出す足が沈み込みます。阿仁合駅の駅舎は最近立て替わったらしく、綺麗な建物でした。「豪雪地帯」って感じの形状ですね。

阿仁合

 ここだけ見ると「道の駅」のような雰囲気ですが、駅前に出てみると一面の雪です。雪が厚くて車で走る気にもなれませんね。そして、山が近い。

阿仁合駅前

 外を歩くのも寒そうですし、乗り換え時間も長くはないので、駅の売店で買い物を済ませて再びホームへ戻ります。続きの角館行は2両編成です。

角館行

 ……ですが、後ろ一両は締め切りでした。滑走防止か、折り返し用か何かでしょうか。乗客の数的に、一両でも全然余裕はあったのでいいのですが。まあでもだったら、阿仁合までの一両をそのまま角館まで運行してくれればラクだったな…と思いますが、車両の走行距離の問題とかもあるんですかね。

ボックス席で雪見酒

 空いてるボックス席だし大丈夫かな…と思って、急遽阿仁合駅の売店で購入した日本酒。開けようか開けまいか悩んでいたところ、他所のオッサンがチューハイを開けた音がしたので、こちらもワンカップ開封。暖かな車内から、流れゆく寒々とした雪景色を眺めながら頂くお酒は格別です。冷気を浴びながら飲むお酒も良いですけどね!おつまみも阿仁合で買った「バター餅」。予想以上に「バター」と「餅」といった素直な味でした。マタギの方の非常食だか何とかだそうで、確かにお腹に溜まりそうな感じです。

美しき哉、銀世界

 車両は変われど、列車は力強く雪の中を進んでいきます。「景色といっても雪ばかり」と思う勿れ。山あり川あり、様々な種類の「雪景色」を走り抜け、雪のあらゆる美しさを教えてくれます。そして渡るは秋田内陸線屈指の名所「大又川橋梁」。通過前にはわざわざアナウンスしてくれ、さらに橋の上では徐行してくれます。

徐行は嬉しいけど少しコワイ

 橋には柵がなく車両に被らないため、鉄道写真を撮るにも良い人気スポットなんだとか。でも柵がないということは下を見ると……。高所恐怖症ではないですが、それでも徐行されるとちょっとドキドキしますね()。わざわざ徐行するだけあって、高い橋の上から遮るものもなく銀世界を一望でき、まさに絶景です。

赤い橋梁がいいアクセント

 やがて山間部を抜けると視界が開け、人の気配が戻ってきます。田んぼ広がる平野部を走ると、もうすぐ終点・角館です。

人の手を感じます

 雪深い道中でしたが、遅れることなく定刻で角館駅に到着。頭端式ホームに赤い気動車が入線します。

秋田内陸線の終点

 厳しい経営が続く第三セクター秋田内陸縦貫鉄道。車窓には豊かな自然が広がり、ローカル線の魅力がたっぷり詰まった路線でした。鷹巣から角館までトータル2時間半、長いようですが美しい車窓を眺めればあっという間。機会があれば是非乗ってみてください。

旧型ポストが似合う駅
こまち23号:角館(1525)~秋田(1608)

自動改札は新幹線専用です

 角館からは田沢湖線特急こまち号で一気に秋田を目指します。発車案内にも普通電車と並んで「こまち」の文字が。盛岡行の普通電車が、こまちとの行き違いのため長時間停車します。

単線の在来線を疾走するE6系

 「新幹線」とか自称してますが、この区間はただの(標準軌だが)ローカル線。変に仰々しくない駅のホームが、新幹線との距離を身近なものに感じさせます。とはいえ、普通のホームに流線形のノーズの長い車両が入線してくるのは違和感がありますが。

新旧赤い列車

 こまち号は全車指定席ですが、在来線区間に限り自由席料金で特定特急券*8が発売されます。立席とか書いてありますが、空席の利用がちゃんと認められているのでご安心ください。

指定券っぽい…のに号数の表記がありません

 いざ乗車すると空席は目立ち、座る場所には困らずに済みそうです。乗客も東京からの長旅に疲れているのか、黄金色の座席とは裏腹に重い空気が漂います。

 こまち号のE6系は流して走って田沢湖線の終点・大曲駅へ。流石は320 km/h対応車両。在来線の130 km/hなんてへじゃありません。揺れもほとんどなく滑らかに雪原を駆け抜けます。とはいえ、単線ローカル線を130 km/hで駆け抜けるのは中々迫力があり、普通電車や先程までの気動車とは比べものになりません。

みんな大好き三線軌

 大曲からは奥羽本線に入って秋田駅へ。ですが奥羽本線に入るには進行方向を変える必要があるので、ここから先は座席とは逆向きに走ります。なるほど、路線が大きく曲がる必要があるので「大曲」と言うのですね(大嘘)。角館~大曲は12分、大曲~秋田は30分なので、今回は乗車時間の大半を逆向きで走行することになります*9。新幹線車両なのに、不思議な気分です。

 名物三線軌*10を眺めていると、遠き山に日は落ちて。本日の終点、秋田駅に到着です。地平ホームに新幹線が止まってるのはなんだか落ち着きませんね。写真奥には男鹿線が並びます。

秋田駅は流石に大きい
秋田駅

秋田駅のライトアップ(後ほど撮影)

 本日の目的地・秋田駅に到着です。あとは宿にチェックインして晩御飯を食べて寝るだけ。というわけでまずは駅構内の商業施設の試飲コーナーへ。最近は旅先のお酒を飲むことにハマっています。折角、車を運転しなくていい訳ですしね。

左から1,2,6番目を飲みました

 日本酒というものは飲み比べてみると全然個性が違うものですね。じゃあどれが好きか?と聞かれると困りますが……。複数人での旅行の場合、何本か買って飲み比べればいいですが、一人旅で何本も開けるのはしんどいので、こういう飲み比べコーナーは有難いです。

10階からの景色

 適度に暖まったところで、本日の宿・アパホテル〈秋田千秋公園〉へ。安い宿が他に無かったのでここに決めましたが、最近リニューアルしたらしくきれいで良かったです。まあ内装は全国どこも似たような感じですね。駅から徒歩10分程度で、少し離れている…らしいですが、雪さえなければ特に気になりません。

ディナーのお供に地酒セット

 宿に荷物を置いて再び駅前へ。唐橋茶屋さんを訪ねます。ホテルの1階に入っていて、一人でも入りやすかったです。早速地酒飲み比べセットと秋田名産定食を注文します。ここでも、ゆっくり色んな日本酒を味わえるのは嬉しいですね。「雪の茅舎」色んな所で推してましたが、確かに美味。

秋田名産定食

 そして晩御飯の「秋田名産定食」の登場です。良い値段しますが、「きりたんぽ」や「いぶりがっこ」をはじめ、「ハタハタ鮨」やら「えご刺し」やら名物が一度に味わえる欲張りセットです。やっぱりせっかくだから、「秋田といえば」ってものを食べたいですからね。定食なので、きりたんぽ鍋やら一人でもいろいろ味わえて良かったです。ごちそうさまでした。

夜の千秋公園

 秋田を味わいつくしたところで、宿へ戻ります。すっかり周りは暗くなり東北らしい冷気を感じます。スマホが「雪の予報です」と教えてくれましたが、本当に外に出たら雪がちらついていました。足元に気を付けて、暖かい部屋に早く戻りましょう。

宿に戻ると、雪はより一層強く

2024年1月14日

秋田の朝

 おはようございます。夜が明けて雪も上がりましたが、道にも屋根にもうっすらと雪が積もっています。東北って感じですね。

堀の水も凍っています

スズメも寒そう
快速リゾートしらかみ1号:秋田(0819)~青森(1329)

特急つがる1号なら11:19には青森に着きます

 まだ朝8時と早いですが、前日は6時の新幹線に乗ったのでどうってことないですね。という訳で朝の秋田駅。これから青森へ向かいます。

リゾートしらかみ1号

 これから乗るのは観光列車の歴戦兵、「リゾートしらかみ」です。風光明媚な五能線回りで約5時間青森駅を目指します。特急つがるなら2時間半の行程、倍の時間をかける価値や如何に…?

今や最古参のくまげら編成

 車両はキハ40系「くまげら」編成。新造のハイブリッド車*11も走る中、リゾートしらかみ唯一の国鉄型のキハ40系からの改造車であり、「ジョイフルトレイン」の血を受け継ぐ数少ない生き残りです。昔改造されたての頃、品川駅に見に行った記憶がありますが、ピカピカだったあの頃とは異なり、大分塗装の痛みも目立ちます。そもそもが改造車ですからね、いい御歳です。

キハ48形

 とはいえ流石は「のってたのしい列車」。内装は年季こそ感じさせるものの、「乗ること自体が楽しめる」よう配慮が行き届いていて快適です。大きなものに交換された窓は観光列車ならでは。更にハイデッカー構造となっており、五能線の売りである景色を存分に味わえるようになっています。シートピッチもグリーン車並みで、長時間乗車でも窮屈さを感じさせません。

「くまげら」車内

とはいえこのトイレはちょっと…(笑)

 朝早い列車とあってか乗客もまばらで、定刻に秋田駅を発車。豪快なディーゼル音を鳴らして…ということもなく、改造のおかげか非常に静かな走り出し。キハ40系とは思えません。電化された奥羽本線を揺れも少なく走ります。

前面展望を楽しめます

 先頭車両の運転席真後ろはフリースペースとなっており、乗車記念スタンプとベンチが設けられ、前面展望が楽しめるようになっています。

ひっそりと雪に眠る583系

 本当にノーマークで写真に撮れなかったのですが、車両基地には583系の先頭車が雪の中ひっそりと眠っていました。無骨な国鉄車は雪が似合いますね。何度か動いている姿は見ましたが、一度は乗ってみたかった電車です。人生の後悔の一つ。

大きな窓の向こうに

 男鹿線と別れると、観光列車らしく見どころ案内の車内放送が。ただ放送するだけで押しつけがましくないのが、この手の列車のいいところです。

ここから進行方向が変わります。

 そうして東能代駅に到着。ここで一度奥羽本線と別れ、いよいよ五能線に入ります。が、そのためには進行方向を入れ替える必要があり、みな座席を回転させます。車掌さんも方向転換を呼びかけながら、各号車の空席を手動で回転させて回っていました。

本物くまげらと並んで

 スイッチバックもあって東能代駅の停車時間は長め。駅の待合室はくまげら塗装がされていました。なんだか嬉しいですね。

残るキハ40系の面影

 進行方向が入れ替わって五能線に入ると、まずは能代駅に停車。ここも長時間停車であり、数少ない売店が入っているので、お菓子を少々買い足しました。なんと「リゾートしらかみに乗った」と言うと5%引きにしてくれます。

冬の日本海

 いよいよ五能線は海沿いに。リゾートしらかみの大きな窓から荒々しい冬の日本海が一望できます。

山も海の近くまで

 うねうねとした海岸線に沿って五能線も蛇行するため、前方にも後方にも海が広がります。個人的な感想ですが、太平洋は晴れて輝いてる景色が似合いますが、日本海は曇天の荒々しさが似合う気がします。

海沿いに岩がちな独特な地形

 目前にごつごつとした岩場が迫り、奥には何もない海が広がる。そういった独特な地形が車窓に広がります。

新旧リゾートしらかみ

 しばらく走ると列車は深浦駅へ。ここではリゾートしらかみ同士の交換が見られます。「お乗り間違えのないよう」とアナウンスされますが、橅編成ならともかく流石にくまげら編成では間違えませんね。

一期一会の景色

 延々と海沿いを走るわけですが、岩の形・色、海の様子やら常に変化に富んでいて、二度と同じ景色はありません。見逃せない車窓が続きます。

五能線の終わり

 内陸部に入ると津軽三味線の生演奏(は先頭号車だけで、他は車内放送でライブ配信)が振る舞われます。やがて列車は五能線の終点・川部駅へ。奥羽本線感動の再会です。ここから青森へひとっ走り…と言いたいところですが、再度進行方向を入れ替えて弘前駅へ。この区間は短距離なので、座席を回転させる人は居ません。後ろ向きに発車です。

指定席料金は840円

 弘前で再度進行方向を入れ替えて、新青森奥羽本線を駆け抜けます。もうすぐリゾートしらかみの旅も終わり…と思いきや意外にも、弘前から乗車してくる客も結構いました。確かに、弘前新青森はノンストップだし、特急料金は不要で指定席料金(840円)だけで済むのですから、時間さえ合えばアリかもしれません。五能線の景色を味わえないのは勿体ないですが、晴れてれば岩木山も綺麗だし、乗り心地も特急以上ですからね。

本州の終点、青森駅

 そして新青森を出て終点青森駅に到着。長駆5時間、長旅でしたが快適で、全然飽きのこない旅行でした。どこで乗ってもどこで降りても構わない、この自由度こそ鉄道の魅力だと思います。それでいて見所のアナウンスや観光徐行も押さえていて、観光列車の先駆けながら、長寿を誇るだけの完成度です。観光列車の指定席料金が値上げされたとはいえ、通しで乗って5時間、特急料金不要で指定席代840円だけで楽しめるというのは破格に感じます。東海道線グリーン車より快適ですからね。快速なので18きっぷも使えますし。

津軽海峡・冬景色
奥羽本線:青森(1448)~新青森(1453)

最新の気動車

 さて、青森駅周辺をうろついたら、そろそろ帰りの新幹線の時間です。こうして無駄に青森駅まで足を伸ばせるのも、五能線フリーパスのおかげですね。

 青森駅から再び奥羽本線弘前行で一駅、新青森へ。車両はなんと気動車、GV-E400系です。津軽線五能線の間合いとかなんですかね。最新の気動車、というだけあって、車内はE131系を思い出す雰囲気。ボックス席も付いているので、一駅ですがのんびり最後の青森の車窓を楽しみます。…といいたいところですが、エンジン音がうるさい!発電のため*12常に最大回転数だからか、くまげら編成どころか城端線のキハ40もびっくりのエンジン音です。長距離乗るなら701系の方がマシかも……。

はやぶさ60号:新青森(1517)~東京(1832)

帰路、東京へ

 新青森に戻ってくると、帰りは目前です。1階でお土産とジュースを購入すると、新幹線ホームへ。帰りのはやぶさ新青森始発なので、既にホームに入線してました。不定期のはやぶさ号で認知度が低いのか、奥羽本線内でも新青森駅でもしきりに「本日は臨時はやぶさ60号の運転があります」とアナウンスしています。臨時列車ゆえ車内販売はありません。残念。

 さて、旅の終わりを飾るはやぶさ60号は速達タイプ。新青森始発で、八戸・盛岡・仙台・大宮・上野にしか止まりません。こまちも引き連れず単独運転の孤高の存在…のはずが、所要時間は3時間15分…って行きとほとんど変わらないじゃないか!まあこの臨時はやぶさ60号、更なる繁忙期には臨時こまち60号の運転も想定されており、盛岡で併結作業のための6分もの停車時間が用意されているスジなのです。それでも新青森~盛岡はもう少し速くたっていい気がしますが……。

 更にカオスなのはこのはやぶさ60号、先行するおそぶさ*13はやぶさ110号*14北上駅追い抜きます。仮にも最速種別のはやぶさ(おそぶさ)が抜かれるのかよ!これだから東の新幹線の列車名は……。ドル箱の東京~仙台で稼ぎたい気持ちも分かりますがね…。それとも、「ウチの駅にもはやぶさを止めろ!」とうるさい人々向けの対策なのでしょうか。

 とはいえ盛岡以南を320 km/hで疾走するはやぶさは速いですね。盛岡以北ももう少し待てばこのスピードになるのでしょう。窓の外を見ていると日はすっかり落ちて、あっという間に東京です。

おわりに

夕焼け東北新幹線

 長くなってしまいましたが、それだけ密度の濃い旅行でした。秋田内陸縦貫鉄道五能線も雪景色が美しく、豪雪の危険性はありますが冬の東北に行けて本当に良かったです。そんな冬の東北に行くきっかけを与えてくれた「どこかにビューン!」には大感謝。6000 ptで大いに楽しめました。東京~新青森は通常往復16430円なので、どういうカラクリなのか不思議ですが、存分に有効活用させて貰いました。

 行きたい場所が決まっているなら別ですが、全国どこでも行ってみたい場所があるような私にとっては「どこかにビューン!」はピッタリの企画でした。割と長期間実施されそうなので、皆さんも是非お試しあれ。損はしませんしね。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

*1:新青森より北は北海道新幹線

*2:2024/3/16以降は「新幹線eチケット(どこかにビューーン!)」に変更

*3:盛岡以南は一般的な停車駅

*4:とはいえ大宮~宇都宮は275 km/h制限

*5:「つばさ」は下り本線と平面交差するので、つばさが出発するまではやぶさは通過できない

*6:八戸駅

*7:国鉄阿仁合

*8:普通車指定席の空席が利用可能

*9:座席を回転させても良いとのアナウンスがありましたが、回転させてる人は見ませんでした

*10:狭軌標準軌の両方に対応するために敷かれた3本のレール

*11:青池編成・橅編成

*12:エンジンで発電してモーターで動く電気式気動車

*13:仙台以北各駅停車タイプ

*14:10分前の盛岡始発