ぼくとー旅行記

どんなに些細な距離であっても、非日常がそこにあるならそれは旅行である。

大学(ラボ)よりも遠い場所 (前編)――宇宙よりも遠い場所(2)

初稿: 2024/04/21

2022年7月2日 (D1)

宇宙よりも遠い場所

 以前も記事にした通り、私の心を掴んで離さないアニメの一つが2018年放送の『宇宙よりも遠い場所』(そらよりもとおいばしょ)、略称『よりもい』。

bokutou-travel.hateblo.jp

 その作品の主人公が住んでいる場所というのが群馬県館林市。いわゆる聖地ってやつですね。東京からほどよく遠く、ふらっと旅行するにはうってつけ。もう放送から5年近く経ちますが、行ったことがないので行ってみることにしました。東武伊勢崎線系統もまだ乗ったことなかったしね。

ふらっと両毛 東武フリーパス

切符は自動改札を通せますが、使用済印のため有人へ

 今回使う切符は、こちらの「ふらっと両毛 東武フリーパス」。茂林寺前以北のフリー乗車券(有効期間は3日)と茂林寺前までの往復乗車券がついて2440円と大変お得な切符。伊勢崎線系統を乗り潰す今回にはピッタリです。さらに路線バスも乗り降り自由と、かゆいところに手が届く本気の切符です。まあ今回は使わなかったけど……。窓口で購入すると観光案内やらクーポンやらが付いたパンフレットも渡されるという好待遇。伊勢崎線の日光を作りたいという東武の強い意志が感じられます。

www.tobu.co.jp

りょうもう35号:浅草(1839)~館林(1947)

古き良きターミナル駅

 という訳で、土曜日さっさとラボを抜け出してまずは浅草駅へ。細いビルの一角を占める頭端式ホームが、時代を感じさせます。

特急券を買えば特急にも乗れます

 東武浅草駅の窓口で、前述の「ふらっと両毛 東武フリーパス」と特急券を購入。みどりの窓口を減らしまくってるどこぞのJRとは違い、東武は小さいながらもちょくちょく窓口が残っていて良いですね。「出札」の趣があります。

キツいカーブと狭いホームが東武の苦悩

 早速改札を抜けて、東武浅草駅名物「歩きスマホへの殺意が高すぎる乗車口」です。一歩踏み外せば最後、ミニ新幹線もびっくりなステップに、東武の苦労の跡が滲みます。車両は書類上屈指の歴史を誇る204Fでした。

Ryomo

 特急「りょうもう」号の車両はもちろん東武200系。燦々と輝く方向幕に、どこか懐かしさを覚えます。車内に足を踏み入れると「国鉄!」という印象が。まあ私鉄ですけどね。西武のニューレッドアローよりも183系感がありますね。とはいえ車内は「古くさい」というよりは古き良き特急感。レトロながらも必要十分です。185系よりも良いんじゃないでしょうか。少なくとも館林までの1時間ちょいなら無問題。

どことなく漂う国鉄

 指定された座席へと向かい一息つくと、いよいよ発車時刻。私鉄特急はとうの昔に全車指定席なのに、JRが全車指定にすると叩かれるのは何でなんですかね。まあ料金の差か。それはさておき、電車は浅草駅をゆっくりと出発すると東京スカイツリーを見上げ、半蔵門線直通と合流して曳舟駅へ。やがて東武最大のJR合流駅である北千住を出たところでようやく特急らしく快走し、私鉄最長の複々線を思う存分満喫します。爆走しすぎて、東武一大乗換駅のはずの春日部駅を通過するのは不思議なところではありますが。日光線系統の特急*1は春日部に止まるのにね。
 東武動物公園駅日光線と別れ、久喜駅JR東北本線を跨ぐと、いよいよ内陸へ向かって一直線。浅草駅から約一時間、あっという間に館林駅に到着です。特急だと快適ですね。時間も時間だからか、乗客もまばらでしたし。

ふーん、結構きれいな駅じゃん
館林グランドホテル

館林駅に並ぶ「よりもい」のぼり

 パシャパシャ館林駅で興奮している不審者になっていますが、すでに午後8時と時間も時間ですので駅前でタクシーを拾って宿に向かいます。流石は群馬、駅前に設置された温度計は夜なのに気温31度を指してました。

夜の館林グランドホテル

 今回泊まるのは「館林グランドホテル」。よりもい劇中で白石結月が滞在していたホテルのモデルの一つです。この存在があるから、館林で一泊したようなものですよ。まあよくある地方の古いビジネスホテルですが、「館林駅~ホテル間のタクシーの領収書」をフロントに見せると、タクシー代をキャッシュバックしてくれます。真っ暗な夜の館林を歩くのはコワイのでありがたいですね。運転手さんに「領収書下さい」と言うと「あーキャッシュバックかなんかしてるんだよね?あのホテルに行く人みんな領収書貰うもん」って言われました。その通りでございます。

一人旅なんですけどね

 チェックインが遅かったからか「部屋おまかせプラン」だったからか、一人なのにツインルームを割り当ててくれました。片方しか使わないのが勿体なかったですね。ちなみに館林駅周辺には特に飲食店が無いし(時間も遅いため)、ホテルからコンビニも遠かったので、晩御飯はお菓子だけです。まあ仕方ない。

味のある扉

7月3日

つつじが岡公園

朝の館林グランドホテル

 おはようございます。ゆうべはよく眠れました。という訳で外も明るくなったことですし、ホテルをチェックアウトして聖地巡礼へ。フロントの隅によりもいグッズがさりげなく飾られているのが、圧しが強くなく好感が持てます。

つつじが岡公園

 ホテルから歩いて10分ほど。つつじが岡公園に到着です。といっても広い公園なので、敷地内に入ってからが長いですが。水辺あり木々あり花ありと、自然に触れあえる良い公園です。半日くらい、ここでのんびりピクニックするのも気持ちいいと思います、暑くなければ

例の東屋

 水辺を抜け奥へ歩いて行くと、小高い丘の上に見覚えのある小屋が。よりもい劇中で何度も出てきた東屋ではありませんか。あの特徴的な丸窓も、実在したんだ……!

東屋からの景色

 感動のあまり、東屋の写真を撮りまくります。端から見れば、ただの公園のベンチなのにね。それでも私にとっては、アニメで何度も観た光景そのもの。胸をときめかせながら東屋に腰掛け、外を眺めます。劇中では描かれないけれど、キマリ*2たちが見たであろう景色が目の前に広がっている……!

キジバトも暑そう

つつじが岡ふれあいセンター

 つつじが岡公園は流石に広く、中には学習センターまで設けられています。きっと近所の小学生とかは社会科見学で訪れるのでしょう。

いたるところに「よりもい」が

 そんな「つつじ映像学習館」に入ってみると、中にはよりもいコーナーが。うへぇ、ここは天国か。よりもいグッズや場面ポスター、ファンが思い思いに綴った寄せ書きや巡礼ノートに、時を忘れて見入ってしまいます。ちょうど「よりもい」主人公4人が「館林アニメアンバサダー」に任命されたこともあり、パネルも展示されていました。さらにはお土産を購入すると、コラボキービジュアルで結月が持ってる紙袋(「おみたて」と書かれてる)と同じものを付けてくれる、とのことなのでグッズを購入してしまいました。

三宅日向の誕生日が近いので、祭壇が出来てました

 この辺一帯は、昔館林城だったそうで。「ツツジ」もその城主に所縁があり、長い歴史を持つつつじ園なんだとか。ツツジのシーズンじゃなかったのが残念ですが、国の文化財になるレベルで様々な品種が栽培されています。

春には鮮やかな花をつけることでしょう

 せっかくなので公園を一通りぐるっと回って、館林駅方面に戻ります。広いですけど静かで自然豊かな場所で、休日を過ごすのにぴったりな公園でした。散歩しがいがあります。

リラックスできる、良い場所でした
ローソン館林本町一丁目店

ゴリラビル

 つつじが岡公園を後にして、館林駅へ戻ります。道中、なんだか見覚えのある建物がちらほらと。初めて訪れる街のはずなのにね。

キマリと日向のバイト先

 さて、どうしても行きたかったのがこのローソン。作中で日向とキマリがバイトしていた設定の店舗です。別に特段コラボとかはありませんが、是非利用してみたかったお店です。

明るい時間に見る館林駅は中々
茂林寺

茂林寺前駅

 館林から電車で一駅、茂林寺前駅に移動。劇中で白石結月(CV: 早見沙織)が降り立った駅ですね。ちゃんと結月ののぼりを立ててるスタッフは分かってます。ここに来たら呟くセリフは勿論、「はぁ…軽く死ねますね……」*3。いや、ネタ抜きにガチで死ぬほど暑いけど。自分の声帯が早見沙織でないことが悔やまれます

紛失現場

 あとは物語すべてのはじまり、報瀬が100万円落とした現場も当駅です。封筒に100万円入れたのを持ち歩いて、同じ緊張感を味わうのも一興だったかもしれません。落としたくないけど。

茂林寺

 さて、駅名にもなっている茂林寺は、館林有数の観光地。かの名作(?)「ぶんぶくちゃがま」の聖地です。そんなこともあり、境内にはタヌキの像がたくさん並びます。

会話でお馴染みのベンチ

 まあもちろん、よりもいでも数々のシーンで使われた舞台です。キマリたちが会話に使っていたベンチも存在します。蚊が飛んでて落ち着かないけど……。

巡礼者セット

 境内にも巡礼ノートと観光マップが設置されていました。こういうの、巡礼者が歓迎されている…かどうかは分かりませんが、少なくとも受け入れてくれてるようで、嬉しいですね。

タヌキ好きにはたまらないでしょう
もり陣

まゆ玉うどん

 茂林寺の裏には里沼が広がり、遊歩道もあってこれはこれで有名らしいですが、訪ね損ねてしまいました。まあ、雨も降りはじめたことですし仕方ないですね。そんなぬるい雨でも、体感温度を幾分か下げてくれる気がします。

うどんとわっぱ飯のセット

 館林は小麦と、それを使ったうどんが有名だそうで。そんなうどんをいただきます。食器からして風情がありますね。お味はもちろん、どれも手作りを感じる暖かみのある味でした。クセは無いけどどことなくうどんの「濃さ」を感じたのは、売りのシルクを練り込んであるからなのか、小麦の味なのか。とにかく、美味しゅうございました。

よりもいゾーン

 そんなもり陣さんも、ファンの憩いの場になっているそうで。お客さんから寄贈されたグッズが所狭しと並べられている濃ゆ~い区画に案内してもらいました。す…凄い……愛に溢れている……!「せっかくなので黒板に書いていってよ」って店主のおじさんに言われたけど…そんな画力ないよ!!ファンの愛と、それを受け入れてくれる店主さん。そんな優しさにつつまれた空間に優しいおうどんでした。

外から見るとこんな感じ
LA MANON

館林までの複線を特急が駆け抜けます

 茂林寺前から再び館林に戻って。さっき朝ご飯を食べたばかりな気がしますが、駅前のLA MANONさんにお邪魔します。

LA MANON

 店内に入ると、これまた見覚えのある内装が広がります。そう、キマリの親友めぐっちゃん行きつけのカフェのモデルがこちらのお店です。

ちょっと一息

 昼飲みにも惹かれましたが、アイスコーヒーとパフェを注文。暑い外を歩いてきた身に、アイスコーヒーが沁み渡ります。一方で店員さんは何かを察したのか、店内BGMを変更。耳をかたむけてみると、なんと「よりもい」のサントラではないですか。安らぎのひとときです。

ここにも巡礼ノートが

 そんなLA MANONさんはよりもいのオフ会などでも使われているようで。ここでも聖地巡礼ノートを預かってくれているらしく、いろいろグッズを見せてもらいました。ちなみにバイトの店員さんはよりもいを見たことが無かったらしく、最近見始めたら見覚えのある風景が出てきて面白かったとか。まあ、長らく館林で放送されてなかったしね。地元の方が見るとなるほど、そういう楽しみ方になるんですね。

実際のカットと共に

 さて、お腹も心も満たされたところで。次なる旅(東武線乗り潰し)に出かけるとしますか。

きっとまた旅に出る

雨が降っても34度

 東武伊勢崎線の拠点駅の一つ、館林駅。「よりもい」の聖地たるこの街には、「よりもい」が溶け込み、そして地元の方々もそれを受け入れる優しさがありました。街は押しすぎず程々の距離感で、それでいて有志のファンの方々の並々ならぬ熱意が、一般ファンの私でも聖地巡礼を楽しめる環境を整えて下さいました。行く先々で見つけた巡礼ノートに、心が震えたのを思い出します。好きなものを好きな人達がいる。こんなに嬉しいことはない。

 キャラが歩いた道を歩き、キャラの見た景色を見る。地元の空気感を味わうそれこそが、いわゆる「聖地巡礼」の醍醐味だと思います。そのような巡礼ができる環境を整えて下さった地元の方々と有志のファンの方々に、重ねて御礼申し上げます。これからも名作「よりもい」に惹かれた人々が、巡礼旅行を楽しめますように。

参考文献

 以下のサイト様のおかげで、聖地巡礼を楽しむことができました。ありがとうございました。

tatebayashi.info

survive-tactics.com

ajin-movie.com

touyokojunrei.com

ameblo.jp

*1:きぬ・けごん

*2:よりもいの主人公

*3:白石結月のセリフ