ぼくとー旅行記

どんなに些細な距離であっても、非日常がそこにあるならそれは旅行である。

気晴らし素晴らし雨晴らし

初稿: 2023/07/23
追記:2023/12/17

 北陸へ向かうルートと言えば。

 越後湯沢から特急「はくたか」には乗りました。新幹線「かがやき」にも乗りました。そして先日、特急「サンダーバード」にも乗りました。

金沢駅にて(2014年)

bokutou-travel.hateblo.jp

 でもまだ乗ってない特急があるよなぁ?ということで、冬の北國へレッツゴーです。

2023年2月10日 (D1)

 今回使うのはこちらの「北陸観光フリーきっぷ」。名古屋~北陸の特急(指定席可)と北陸エリア(敦賀~黒部(宇奈月温泉))のフリー乗車券のセットで、その上フリー区間特急・新幹線の自由席も乗り放題、それでいて有効期間は4日もあるという破格のきっぷです。これだけついて16230円というから驚きです(静岡発も設定有)。これだけお得だと、北陸新幹線敦賀延伸時の処遇が気になるところではありますが…。

railway.jr-central.co.jp

 注意すべき点は2点。まずは、名古屋~北陸の移動では同じ経路で往復はできず、往路復路で「ひだ」「しらさぎ」を1回ずつ使わなくてはならない点でしょうか。まあこの謎の縛りも我々にとっては御褒美ですね。しらさぎはともかく(米原~名古屋は新幹線利用可)、ひだで富山まで行くのは本数が限られて少し大変ですが、安心して下さい。接続待ち用でしょうか、「下呂・高山・飛騨古川での途中下車」が認められていて、至れり尽くせりです。

 もう一点の方が深刻で、発売箇所が限られる(新蒲原以西)点です。まあ、ターゲットが中京圏の人間なので仕方ないといえば仕方ないですが、わざわざ1ヶ月前に新蒲原まで足を運ぶハメになりました。発券してから指定席を押さえられるようになるので、繁忙期での利用は難しいかもしれません。

※わざわざ購入しに行った前日譚はこちら。

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 それでもかなり強力なきっぷなので、皆様も、廃止前に是非どうぞ。

のぞみ455号:東京(1954)~名古屋(2133)

早めの新幹線に振り替えました

 珍しく教授が早めに帰っていたので、私もさっさと研究室を抜け出します。元々は最終のぞみ(名古屋行)を押さえていたのですが、東京駅に向かう車内でもっと早いのぞみに変更します。こうやって、乗る列車の融通が利くのがEX予約の良いとこだったんですけどねぇ…。

新幹線の中でまずは一杯

 車両はN700a。慌てて振り替えましたが、隣に人は来なくて良かったです。この時間の乗客は大体サラリーマンで、大体飲んでるので、ビールを開けるのも気兼ねしなくていいですね()

名古屋はちょっぴり雨模様

 早めの新幹線にしたおかげで、まだ飲食店が開いてる時間に名古屋に着けたので、名古屋名物の手羽先をいただきます。宿は栄に取りました。

手羽先の食べ方で余所者ってバレますね

2023年2月11日

 世間では土曜が祝日になると残念な気持ちになるようですが、土曜日も研究室に行かされる大学院生にとっては土曜の祝日は大歓迎です。連休が誕生するわけですからね。こうして連休朝から名古屋に居られることに感謝しつつ、旅に出ましょう。まずは、名古屋の喫茶店でモーニングから。

グッドモーニング名古屋
特急ひだ3号:名古屋(0843)~富山(1231)

名古屋で目にする富山行き

 朝から名古屋に居たのはこの「ひだ3号」に乗るため。一気に高山本線を駆け上ります。このひだ3号は速達タイプの花形列車。だからか最新鋭のHC85系が充当されました。本当はキハ85系にも乗っておきたかったんですが…運用の都合上仕方ないです。このHC85系が富山まで乗り入れるようになったのも、つい最近(2022年12月)のこと。早速期待のニューフェイスに乗ってみましょう。

増結しまくり

 2月の連休ということもあってか、富山行編成の指定席は満席、自由席には立ち席が出るという盛況っぷり。そして当然のことながら、富山行編成に乗ってる人の7割位は終点富山まで乗り通してました。意外とこのルート使う人って居るんですね。実際、景色はいいし納得のルートではありますが。

鉄道界のプリウス。岐阜までは逆走します()

 車内は電車ほどではありませんが、気動車とは思えないほど静かです。流石ハイブリッド。静かすぎて逆に物足りない…。サービス面も、新幹線同等。各座席にコンセントはあるしwi-fiは飛んでるし快適です。電車特急のしらさぎより圧倒的に良い。HC85系、鳴り物入りで導入しただけのことはあります。ハイデッカー構造でないのは残念ですが、バリアフリー対策が求められる現代では仕方ないでしょう。気動車として圧倒的な走行性能を見せつけたキハ85系。その代替のHC85系も、ハイブリッド車として圧倒的な走行性能を見せつけ、前任者に引けを取らない素晴らしい車両です。

 なお車内販売はないので富山までの約4時間、しっかり準備は必要です。

岐阜を出ると一気に山中へ

 列車は名古屋を出発すると、電車に負けない加速度を発揮して東海道を岐阜へ駆け抜けます。現代風にアレンジされた豪華な「アルプスの牧場」が流れると、途中駅の案内と共にその場その場での見所紹介が放送されます。特急ひだ車窓の魅力を、余すとこなく楽しませてくれる、粋な案内だと思います。

標高が上がると、残雪が

 岐阜を出て進行方向を正すと、川を右に左に高山本線の美麗な山の風景が広がります。事前調査して「8号車奇数番」の指定席を取ったので、窓枠に煩わされることなくこの車窓を満喫できました。段々と併走する道路の交通量が少なくなり、河原の雪化粧が増えてくると、山奥へ進んできたことを実感します。

一面の銀世界。これぞ北国

 下呂駅を過ぎると、いよいよ冬の山岳地帯の景色に変わっていきます。やっぱり冬は雪を見ないと締まりませんよね(小学生並の感想)!とはいえ雪はこの辺りがピークで、この先山を下ると雪も減っていくんですが…。

 途中、長いトンネルを通るのですが、この間に分水嶺の地下を通過しているらしく、トンネルの前後で川の流れが逆になります。って車内の案内放送で流れてました。言われなきゃ気にして見ないので、ありがたい放送ですね。確かに言われてみれば納得です。これも日本を縦断する高山本線ならでは。

みんな大好き、解結作業

 高山駅では、高山止まりの後ろ4両を切り離します。なので当然、高山観光へ向かう人々を尻目に鉄道好きは大人も子どももこの解結作業を見学します。どうしても見てしまう、謎の魅力がありますよね。私は貫通扉が閉まる瞬間が一番好きです。高山止まりの編成を見送ってからの富山行発車なので、この解結作業は最後まで見ていても間に合います。悠長にしている時間はありませんが。プリウスで言うところのEVモードは無いからか、車外から聞く分には意外と発車時にディーゼルの音がするんですね。この低音が、カッコイイ。

大先輩を見送る

 さて、ひだ3号は身軽になって富山へ向けて再出発です。途中、キハ85系と交換しましたが、この2人が共演するのも残り僅かな期間でしょう。一回あの展望グリーンにも乗ってみたかったな。

確かに川の流れが逆転(進行方向と同じ向き)しています

青い駅名標

 そして列車は猪谷駅に停車。乗務員が交代します。そう、この青い駅名標が語る通りここからはJR西日本管内なのです。いよいよ北陸にやって来た……!

富山駅の隅に追いやられる特急

 そして終点、富山駅に到着です。意外と富山まで乗り通す人が多かった。約4時間の長旅でしたが楽しかったです。富山駅あいの風とやま鉄道に乗っ取られてるのか高山本線は隅に追いやられてるのが悲しいところ。

 有人改札で往路券を使用済みにしてもらうと(記念の使用済はんこもあいの風とやま鉄道仕様でした)、すぐさま復路券をJR改札に提示します。ここからがこのフリーきっぷの本領発揮です。

つるぎ715号:富山(1246)~金沢(1309)

途中停車駅は新高岡のみ

 分断されてしまった金沢~富山を結ぶためだけの新幹線。「かもめ」もびっくりの超短距離列車です。敦賀延伸時には活躍の場が広がると思われますが、新大阪延伸時には無くなっていそうな気もします。その時には「らいちょう」を復活させて欲しいな。敦賀とつるぎ、ややこしいんじゃ。

 そんな短距離ですが、今回はフリーきっぷで乗り放題なのでじゃんじゃん乗っていきます。当然車内はガラガラで、1両貸し切り状態。どう考えても12両も要らなくて、実際何両か閉鎖されているのですが、車両統一による効率化ってやつでしょう。新大阪延伸時には、富山以西の列車は8両が充当されたりするのかな…?(両周波数対応も不要だし)

サンダーバード17号:金沢(1327)~和倉温泉(1430)

 富山から僅か20分程で金沢駅に到着。新幹線って速いですね。でも終点でのんびりする間もなく、急いで在来線ホームに乗り換えます。

この行き先が見られるのもあと僅か

 という訳で、一日一往復限定の特急サンダーバード和倉温泉です。今後サンダーバード敦賀止まりになることは確定なので、もう消えゆく運命の行き先です。ちなみに金沢駅でも解結作業が行われるのですが、自由席を確保するため見学は見送ります。結果として「座れない」という程ではありませんでしたが、ギリギリで窓側の席を確保した、といったところでした。連休だからか、自由席も混んでますね。まあJRにとっては良いことです。

和倉温泉駅

 のんびり七尾線内を走行して、終点和倉温泉駅に到着です。七尾線の観光特急「花嫁のれん」に合わせた駅名標ですね。そういえば七尾線に入る時に交直セクション*1があったはずですが、全然気づきませんでした。

くたびれた君も、何時まで通う?

 つまり、金沢~和倉温泉の特急は交直流電車が必要になるわけですが、北陸新幹線敦賀延伸以降はどうなるんですかね?気動車を使う「花嫁のれん」は当分走ると思いますが、七尾線特急のためだけに683系を金沢エリアに残すのでしょうか?683系をIRいしかわ鉄道に譲渡して、車両を借りて走らせるとか…?

能登かがり火8号:和倉温泉(1519)~金沢(1630)

お昼がまだだったので、近くのカフェにて

 和倉温泉駅から和倉温泉まで距離はありますし、そこが目的地でもないので、適当に散歩して金沢へ戻ります。

見りゃ分かるよ!でも夜は見えないんでしょうね…

列車名は変わって「能登かがり火」

 先程の車両の折り返しに乗って、金沢に戻ります。金沢止まりの列車だと「能登かがり火」という列車名になりますが、名前以外に特に違いはありません。車内チャイムも「北陸ロマン」でしたし、本当にサンダーバードと一緒ですね…。まあでもコイツも、廃止になるかもしれない列車なので……。

 連休初日のこの時間に戻る人はいないのか、車内はほぼ誰もいませんでした。そりゃそうか。

はくたか572号:金沢(1651)~黒部宇奈月温泉(1727)

これに乗れば東京に帰れる…けど

 せっかくだからフリーエリアの端まで行きたいよね、っていう貧乏根性を発揮して、黒部宇奈月温泉駅を目指します。放置プレイだった「つるぎ」と違い、「はくたか」は車内販売まであって驚きました。ちなみに、本きっぷは自由席にしか乗れないので、全車指定の「かがやき」には乗れません

海に山に、全然飽きない車窓

 30分ほど景色を楽しんで、新幹線最長駅名の「黒部宇奈月温泉」駅に到着。一方の富山地鉄は「新黒部駅」を名乗るなど、微妙な関係ですね。駅前は綺麗に整備されていて、地方のSAのような雰囲気です。背景に高い山々が映っているのが、最高に「富山県」って感じですね。

遠き山に日は落ちて
はくたか569号:黒部宇奈月温泉(1745)~富山(1758)

流石にE7系も飽きてきました

 再び新幹線に乗って、富山駅に戻ります。自由席は空いてました。すっかり日も沈んで、暗くなってきましたね。

氷見きときと寿し富山駅

 という訳で、少し早いですが晩御飯です。富山駅内でお寿司を頂きます。お高いですが、「のどぐろ」の寿司は珍しくて美味しかったです。某事件の直後だったので、寿司は回ってませんでした。

北陸といえばのどぐろ
あいの風とやま鉄道:富山~小杉

一応人気はあるのでそこまで怖くないです

 このフリーきっぷ、JRは勿論のこと、3セクも乗れる優れもの。という訳で北陸本線に乗って、本日の宿を取った小杉駅に移動します。

小杉駅から徒歩15分ほど

 さて、本日お邪魔するのはこちら「ホテル太閤の湯」。温泉施設に付属したビジネスホテルで、1泊5000円程度なのになんと温泉施設が使い放題という破格の宿です。唯一の欠点は立地くらいでしょうか。でも旧北陸本線も最低限の本数はあるし、歩けない距離ではないので大丈夫です。道中暗いけど

hotel-taikonoyu.com

「こういうのでいいんだよ」部屋

 部屋は必要最小限…ですが、どうせくつろぐ場所は温泉施設の方なので問題ありません。最近出来た宿なので全体的に部屋が綺麗なのはgood。この価格で更に朝食(パンとカレー)が付くんだから文句はないどころか、リピートしたいレベルです。問題は富山に行く用が無いことですが。
 まあ、別にお金を貰ってる訳でもないので褒めるのは程々にして。温泉上がりに黒部宇奈月温泉駅で購入した宇奈月ビールを飲んで、今日は終了です。美味しかったです。

2023年2月12日

あいの風とやま鉄道:小杉(0850)~高岡(0858)

反対方向に気になる列車が来ましたが、見送ります

 さて宿で朝食を美味しく頂いて、小杉駅を発ちます。今日も良い天気ですね。

 対岸の413系に心を奪われかけましたが、本日のお目当てはそれではありません。旧北陸本線に乗って、高岡駅を目指します。

長いホームに2両編成

 3セク…といっても、この区間は比較的恵まれていて、車両もJR西日本から貰ったばかりですし、岡山・広島エリアの山陽本線のような雰囲気です。流石に2両編成だと座りきれませんでしたが、僅かな距離なので問題ありません。

城端線:高岡(0903)~砺波(0925)

キハ47形

 高岡駅城端線に乗り換えると、打ってかわって真っ赤な車体の国鉄気動車。いいですねぇ~このゴツゴツした見た目がたまらないです。近頃の薄っぺらいヤツからは摂取できない栄養素がありますね()。ボックス席に腰掛け、のどかな風景に目をやる。これぞローカル線といった車体で、旅情をかき立てます。

 20分程揺られて、砺波駅に到着。なんともまあ、中途半端な駅に降り立ちましたが……。

城端線では有数の駅です
快速ベル・モンターニュ・エ・メール1号:砺波(0945)~氷見(1056)

高岡方から回送される、深緑の車体

 待っていたのはこの列車。本日の、いや今回の旅のメインディッシュです。JR西日本屈指の観光列車、「ベル・モンターニュ・エ・メール1号」こと「べるもんた1号」になります。

www.jr-odekake.net

 「べるもんた」はあくまで略称で、正式名称は「ベル・モンターニュ・エ・メール」だと言い張ってますが、駅の発車案内でも車両の方向幕でも、挙げ句の果てに指定券上でも「べるもんた」と表記される始末。一体どっちが正式名称なのやら…。

広い窓に面したカウンター席がオススメ

 それはさておき、この快速べるもんた、たかだか全車指定快速とナメていたら、めちゃくちゃ素晴らしい観光列車でした。この手の列車は飽和してきている感がありますが、キハ40×1両と貧相な編成ながら、格段にレベルの高い素晴らしい出来合いです。富山・金沢に訪れるなら、是非乗って欲しい列車です。そしてどうせ乗るなら、オススメは断然カウンター席かつ氷見線ルートです!(理由は後述)

 まずは車内。未だに扇風機が設置されてるなど時代を感じさせますが、そこがまた愛嬌。まあこんな氷見線に最新鋭のスマートな列車が入られても浮きますからね。豪華にリニューアルされていて、良い意味でレトロさがいいアクセントとなる車内です。グループで旅を楽しめるボックス席に、カウンター席は窓を向くことで絶景を存分に味わえます。最初e5489で一人できっぷを予約したらボックス席を充てられたのは内緒。車窓を絵画に喩え、窓枠を額縁風のデザインにしました』とか何とか言ってますが、それに見合う絶景です。切り取って額縁に入れて取っておきたい、そんな景色。

城端線では雄大な山々

氷見線では美しい海

 氷見線城端線共に、特に綺麗な景色はカウンター席側なので、グループでなければカウンターが良いでしょう。また観光列車らしく、絶景スポットでは列車を止めて景色を楽しむ時間を取ってくれるのも嬉しいですね。ボックス席側の人も、景色を見にカウンター側に来るので、見やすいよう少し窓の景色を分けてあげましょう。

絶景のための停車標

 これは個人の好みだと思うのですが、私は雨晴海岸の美しい海にとても感動したので、氷見線ルートを推します。城端線も、砺波平野と立山連峰コントラストが美しいんですけどね。

寿司職人が乗る列車

 そして何よりこの列車を唯一無二たらしめているのは、この寿司カウンターでしょう。観光列車で地域特産の軽食を出す、というのはよくありますが(近隣だと「花嫁のれん」等)、この列車は寿司職人が乗り込んで握り立ての寿司を提供してくれます。名物提供への意気込みがガチだ……。今回私は「ぷち富山湾鮨セット」(2100円)と「飲み比べセット」(1550円)を予約してあるので、ウキウキで乗車です。一応(在庫があれば)当日販売もありますが、基本予約制なので運良く座席を取れた方は忘れずに。観光列車内の食事の相場をみると、良心的な価格だと思います。列車自体はただの全車指定快速なので、JRに入るお金は乗車券と指定席券(530円)だけなんですけど、大丈夫なんですかね…?それとも車内販売の売り上げの一部がJRに入るのかな。正直急行・特急に格上げされても文句は言えないクオリティだと思います。

席では食事の用意が進みます。記念スタンプもちゃっかり。(検札のスタンプも専用仕様)

 さて、基本的な列車の紹介はここまでにして、実際の乗車記を綴るとしましょう。車内に入り指定した席に向かうと、席にはぷち富山湾鮨セットの「氷見はとむぎ茶」が用意されてました。この先の旅に胸躍らせて、いざ出発です。

つり革も実は富山仕様

 この「べるもんた氷見」は基本新高岡発着*2なのですが、1号だけ何故か城端線砺波駅始発。つまり一番長時間乗っていられる、オトクな列車なのです。なので今回はこのべるもんた1号を選択。お寿司を頂くにはちょっと時間が早すぎるのが難点ですが……。でもわざわざ砺波から乗車する人は少数派で、大多数は新高岡から乗ってきます。ただ意外にも、砺波~新高岡で乗車する人も居ました。この短区間だと料理は購入できないのですが、乗るだけでも楽しい列車なので、地元の人が少し味わってみる分にはいいのかもしれません。実際、新高岡で降りていったのも小さい子連れの家族客でしたからね。あらかたお子さんが「乗ってみたい!」って言ったことでしょう。将来が楽しみです。

お酒は20歳になってから

 キハ40形がエンジン音を響かせ砺波駅を出発すると、早速アテンダントさんが「飲み比べセット」の種類を聞きに来ました。沿線の地酒6種の中から3種類選べるのですが、名前を聞いてもよく分からないのでお寿司に合う辛口3種をチョイス。若駒(南砺市)曙(氷見市)太刀山(砺波市)だそうで。こうして車内で沿線のお酒を複数飲み比べられるのも嬉しいですね。一人だとワンカップ空けるのでお腹いっぱいになってしまうので、いろいろな種類を味わえるのは幸せです。しかも沿線の車窓を眺めながら飲めるなんてサイコーですよ。

沿線の車窓を肴に、味わいも格別

 地酒はやっぱ飲み比べてみるもんですね。意外と違いは感じられます。若駒はクセなく一番標準的な味わい。曙は香ってくるタイプで、スッキリした味わいなので寿司に合いそう、さすが氷見産。太刀山は(写真では分かりづらいですが)黄色っぽい色をしていて、一番味わい深い日本酒でした。濃い味で珍味に合いそうな感じです。まあ、違いを感じられたところでどれも美味しかったです。そんなこんなで、新高岡駅に停車。停車時間は短いですが、新幹線に接続するからか結構人が乗ってきました。前述の通り、降りていく人も居ましたが。なお、べるもんた氷見に乗る場合は、高岡駅でのイベントの都合上、新高岡までに乗っておくといいでしょう。

 さて、新高岡を出て車内が賑わってきた頃には、いよいよお目当ての「ぷち富山湾鮨セット」が運ばれてきました。富山湾で取れた鯛5種類とかだったと思います(うろ覚え)。流石富山、お寿司も美味しそうです。気分的に氷見線に入ってから味わいたかったので、パシャパシャ写真を撮っていたら、隣の客も食べたくなってしまったのか、同じセットを急遽当日注文してました(笑)。そうですよね、べるもんた乗ったら是非食べるべきですって。思ったより提供が早かったですが、乗車時間もそんなに長くないのでありがたいです。

美味しそうなお寿司ですが、氷見線に入るまで我慢

 そして新高岡を出るとすぐに高岡駅に到着。ここからいよいよ、城端線から氷見線に入ります。が、高岡駅の構内配線を見て頂きたいのですが、城端線氷見線北陸本線を跨いで反対側にあり直接繋がってはいません。平面交差とかそういうレベルではなく本線上での折り返しが必要なのです。そのためなんと「べるもんた氷見」ではこの城端線ホーム~氷見線ホームの構内入換の乗車体験まで出来ちゃいます。なおこの構内入換は旅客を想定していない線路を通るので乗客全員の着席が義務づけられます。全車指定の観光列車だから為せる技ですね。しかも北陸本線はあいの風とやま鉄道に移管されているので、もはや別会社の線路です。JRのみならず様々な方面の厚意で成り立っている、貴重な観光列車と言えます。

ピンボケしてますが、保守用車用の停止位置で停車。方向転換のため運転士は車外に降りて反対の運転席へ向かいます。

 「高岡駅構内」っていう割には結構高岡駅から離れたところまで移動したので驚きました。なお、城端線ルートでは氷見線ホームに移動する理由が無いのでこのイベントはありません。これが私が氷見線ルートを推す理由の一つです。あと、この構内入換を体験するには新高岡まで(に)乗っている必要がありますので要注意。高岡で乗降してしまうのはもったいない!

高岡駅構内をジグザグに進んでいきます

 高岡駅を出て氷見線に入ると、観光列車らしく車内も賑わってきました。多くの乗客が、軽食や地酒に舌鼓を打っています。地元の観光協会の方も乗り込み、観光名所の案内を手製の紙芝居で紹介してくれました。結構面白かったです。ちょっと席が離れてて見づらかったですが…。こういう地元との関わりも、観光列車って感じですね。さらに、もう運行開始から7~8年経ちますが、未だに沿線の方が旗を振って見送ってくれました。それだけこの列車が愛されているということなんでしょう。「美しい富山」を感じられる、素敵な列車だと思います。そして「美しい」といえば、やはり。

雨晴海岸の絶景

 木々を抜けた先に広がる雨晴の海。もうこの旅も終盤といったところで、一気に心を奪われます。思わず感嘆の声が漏れ出てしまう、快晴の絶景。雨晴、その名に違わず曇っていた心も晴れ渡ります。

お行儀が悪いですが、絶景は最高の調味料

 前述の通り、海沿いで運転停車してくれるので、この美しい海を存分に味わえます。富山湾を遠くまで見晴らすも良し、目下に寄せる波を眺めるも良し。道路よりも何よりも海に近い、この線路上のスポットからこの景色を楽しめるのは、我々乗客だけの特権です。

 とまあ、楽しい時間もあと僅か。ちょっぴり残した日本酒を飲み干すと、鮮やかな景色にキレ味も増したような気がします。やがて列車は終点の氷見駅に到着。一時間とちょっとの旅、こんな短時間で済ませるには勿体ない気もしますが、腹八分目が丁度いいということなのか。

終点氷見駅。レトロなホームにはレトロな気動車が似合います。
氷見漁港場外市場 ひみ番屋街

怪物くんストリート

 氷見市藤子不二雄A先生のふるさとらしく、至る所に藤子不二雄先生のキャラクターが顔を出します。せっかくなので氷見駅から足を伸ばして、ということで氷見市街地周遊バスに乗って道の駅ひみ番屋街に行きます。とりあえずそこが、一帯の観光の拠点だと思います。

バスも怪物くん仕様

 という訳で、ひみ番屋街。お土産屋さんや飲食店が並ぶ、いわゆるサービスエリア的な道の駅です。車内で寿司を食べてきたばかりですが、飲食店を物色します。氷見といえば…アレですよね。

ひみっとしています

 細くコシのある「氷見うどん」です。ざるうどんが至高ですね。流石に本場は違いますわ()何が美味しいってめんつゆが鰹だしが利いててめちゃくちゃうどんが進みます。というか、飲めるよ、このつゆ。

 さて、腹拵えを済ませたら、散歩しながら徒歩で氷見駅へ戻ります。冬のぽかぽかとした日射しの下、空気も綺麗で散歩も気持ちいいですね。

謎の展望台(左)と比美乃江大橋(右)

 特にこれといったあてはありませんが、綺麗な海岸を散歩しましょう。まずは海沿いにそびえる、謎の展望台に登ってみましょうか。目の前の国道は、結構観光客のマイカーで賑わっています。

展望台からは富山湾が一望できます

 何のことは無いただの展望台ですが、登ってみると何にも遮られない富山湾の景色が広がり、確かに綺麗な光景でした。登ってみて有り難みが身に沁みる、そんな建造物です。

展望台から望む、おしゃれな比美乃江大橋

 展望台を降りると、比美乃江大橋を渡って、海に沿って南下していきます。海が聞こえる、そんな綺麗な道です。

それにしても、戦争が起きそうな名前ですよね

 時折ふと立ち止まって海を眺めるだけでも、日常とは違った時間が流れていくのを感じます。東京じゃこんな絶景、味わえませんからね。

海も山も楽しめる、視覚のよくばりセット

波に心も洗われます

 流石に雨晴まで歩く…なんて時間は無く。適当なところで海に背を向け、駅に向かいます。ここらでキハ40の写真を撮ったら良い感じだろうな~とは思いますが、まあ全然本数が無いんですよね。それにしても歩いて楽しい、海沿いの遊歩道でした。

本線との関わりを絶った側線が、衰退しゆくローカル線を感じさせます

 以上で氷見観光は終わり。氷見駅まで戻ってきました。帰りたくないですが、今日中に東京まで帰らねばなりません。メインディッシュは終わりましたが、旅は続くのです。

その役目を終えた、腕木式信号機
氷見線:氷見(1244)~高岡(1315)

これまた時代を感じさせる改札口

 氷見線も中々のローカル線なので、一本逃すと大変なことになりかねません。少し早めに駅に着いて、列車の到着を待ちます。これまたのどかな景色に映える、真っ赤な車体が入線してきました。

氷見線城端線の主力

 再びキハ40系に揺られて、高岡駅を目指します。一度は観光列車から眺めた車窓ですが、飾らない普通電車から見るのも味わい深いものです。何人もの旅人が、この古い一般型気動車に身を委ね、この美しい車窓に心を奪われたことでしょう。

特別でもないくたびれた窓。特別な鮮やかな車窓。
城端線:高岡(1344)~城端(1441)

小綺麗な高岡駅

 高岡駅では少し時間があったので、改札外に出てみました。というか氷見線城端線の接続が悪すぎです。ペデストリアンデッキから望む路面電車(万葉線)は、なんとも「地方の都市」といった光景です。福井駅を少し小さくしたような感じでしょうか。でも結構疲れてきたので、城端線も入線していたことですし、車内で休憩します。

雪の白と車体の赤のコントラストが最高ですよね

 ホームから城端方面に目を向けると、ラッセル車が留置されていました。これぞ雪国といった光景で、東京人は興奮してしまいます。

日頃は力を蓄える仕事人

 さて、重厚なエンジン音を響かせ高岡駅を出ると、列車は山へ向かってずんずん進んでいきます。朝は砺波で降りましたが、まだまだ序の口。砺波平野を南下していくと、どんどん山が大きくなっていきます。凄い迫力です。

何気ない田舎の田園風景ですが、背景の山の存在感が凄い

 再び家がちらほら見え始めると、終点城端駅に到着。雪化粧した景色が美しいですね。氷見駅と違って「観光地」という感じではありませんが、人々が暮らしているんだな、と感じる街です。ひとけを感じるあたり、越美北線とは全然違いますね()

味のある駅名標と、べるもんた仕様

 そういえば城端といえば、かの名作「true tears」の聖地です。先程の「比美乃江大橋」でピンときた方も居たかもしれませんが。ドロドロした心に迫る人間関係は勿論、精緻に描かれた街並みは聖地巡礼ブームに火を着けました。もう15年近く経つ作品ですが、未だに城端駅隣接の観光案内所ではグッズ等を置いてました。

何処かの雪の下に、愛の言葉が刻まれているのかもしれません
城端線城端(1524)~新高岡(1613)

何枚目のキハ40系でしょうか

 山々に背を向け、乗ってきた列車で新高岡に折り返します。そろそろ帰りの時間が、近づいてきました。しかし振り返ってみると、さすが富山県、見渡す限りの高い山々ですね。まさしく「富山」って感じです。

惰性走行時の静けさが寂しさを誘います

 街の景色が近づいてきて、新高岡駅に到着。新幹線の乗換駅ですが、一面一線というとってつけたような駅。しかも城端線と新幹線の駅は繋がっていません。まあ地方ではよくあることですが。改札を出て、歩いて乗り換えです。別にそんな距離はありませんけどね…。ちなみに新幹線の駅舎はお土産屋兼コンビニも入っていて立派なものでした。

つるぎ723号:新高岡(1627)~金沢(1640)

E7系じゃないよ

 それでは北陸新幹線に乗って金沢に戻ります。乗り放題だからって、この区間も結構乗りましたね。ちなみに車両はとうとうE7系じゃなくてW7系を引きました。何が違うって…?車内チャイムが違います(北陸ロマン)。まあより身近なのは飛んでるWi-Fiが違うことでしょうか。

 新幹線の車窓からも立山連峰がよく見えます。流石富山、最後まで山たっぷり。

しらさぎ14号:金沢(1648)~名古屋(1946)

この表示もいつまでか

 それでは東京に帰りましょう。名古屋経由で。という訳でこの旅のフィナーレを飾るのは特急しらさぎ号です。新幹線と特急がちゃんと接続してるのは有難いんですが、もう少し乗り換え時間が欲しいですね。特急に車内販売は無いのですが、コンビニで買い物してるとギリギリになっちゃうので。まあ、こんな写真を撮ってるのが悪いのかもしれませんが…。

681系非貫通顔だ!(ちなみに今回は両端が非貫通顔でした)

 車両はこちら、古くから北陸を駆け抜けた681系です。しかも念願の非貫通顔です!余計なヒラヒラが付いてなくて、個人的にはJRの在来線特急車両で一番カッコイイと思います。何かもう満身創痍ですけどね……。それだけ681系の歴史を感じさせます。

特急車内から新幹線を眺められるのも、あと僅か

 座席は3号車のモハを引いたので、681系の声を存分に楽しめます。ちなみに連休最終日なこともあってか車内は満席。金沢から名古屋まで、隣に他人が座ってました。名古屋行き編成だからか、名古屋まで乗り通す人が多かったです。意外。

交直セクション通過中

 サンダーバードとは異なり、しらさぎ敦賀からもひたすら北陸本線を南下し、米原で付属編成を切り離します。名古屋行きの場合ここから東海道本線に入るのですが、米原で方向転換するので、解結作業中、乗客も立って座席の回転をすることになります。隣のおじさん起きてくれて良かった……。米原を出発すると、東海道本線をぐんぐん飛ばして名古屋を目指します。18きっぷではノロノロ関ヶ原を飛ばすのは気持ちが良いですね。気のせいかもしれませんが、やはり東海道本線は一番お金のかかってる路線で、列車が北陸本線と比べて全然揺れない気がしました。北陸本線もちゃんとメンテナンスされてて、城端線なんかと比べると全然乗り心地良いんですけどね。そんな東海道本線を飛ばす特急が少ないのは、少し勿体ない気がしました。

681系車内

 東海道本線に入るとあっという間に、終点名古屋駅に到着。約3時間の旅もおしまいです。米原~名古屋で新幹線に乗り換えるのは面倒なので、名古屋直通もアリかな~と思いました。途中米原で先頭車両が入れ替わりましたが、反対側も非貫通顔。なんだかおトクな気分です。それにこっち側の顔は綺麗ですね。……やはり681系は美しい。残された時間は僅かだと思いますが、最後まで元気に北陸を走りきって欲しいなと思います。

名古屋に佇むしらさぎ。最後まで栄光あれ
のぞみ56号:名古屋(2059)~東京(2236)

「立ち食いそば」ならぬ「立ち食いきしめん

 せっかくの名古屋ですから、晩御飯にきしめんを頂くことにしましょう。でも改札外のお店は観光客向けなのか滅茶苦茶混んでたので、改札内・ホーム上の「駅そば」感のある立ち食い店に入ります。価格帯も提供速度も、関東の駅そばのそれ。そば感覚できしめんが出てくるの、流石名古屋ですね。肝心のお味は、鰹節がちゃんと利いてて美味しかったです。本当にサラリーマンとかが食べててちょっと気まずいですが、一人で食べるにはホーム上の立ち食いきしめんで十分ですね。

男の子って、こういう増結好きなんでしょ

 まだまだ新幹線まで時間があるので、行きに乗れなかったキハ85系に会いに行きます。ガッチリ編成が組まれているHC85系じゃ見られない組成で、満足ですね。しかし停車時でも、いい音鳴らしてますね…。

N700Sが東京へ誘う

 さて、最後に乗るのは最新鋭車両、N700Sです。わざわざ狙って乗りました。やっぱり全席にコンセントが付いてるのは有難いですね。東京までの約1時間半、シンカンセンスゴイカタイアイスを食べてるとあっという間でした。

N700Sも西車でした

おわりに

今回使った切符たち

 ちょー楽しかった。「ひだ」をはじめ、変化に富む車窓は見ていて楽しかったですし、何より「べるもんた」が最高の列車でした。また乗りたいくらい。

 「北陸観光フリーきっぷ」も素晴らしい切符で、行きと帰りで経路が違うというのは、いろいろな経路が楽しめて大満足です。強いて言うなら名古屋発着(静岡発着もあります)なのが、関東民には使いづらい点でしょうか。しかし、休みの都合上2日で強行軍したのは勿体なかったですね。このフリーきっぷ自体は有効期間が4日間あるので、3日間北陸3県観光・残り1日は飛騨高山という使い方がベストなんじゃないでしょうか。北陸3県、まだまだ見るべき名所はたくさんあると思うので、本切符を存分に活用して北陸を満喫するのをおすすめします。

 北陸新幹線延伸後の処遇が気になるものはいろいろあると思いますが、今できることとしては最大限楽しんできたと思います。北陸新幹線延伸を機に、たくさんの方が北陸の魅力を味わいに行くことを祈っております。素晴らしかったよ、本当に。

 長くなりましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

*1:北陸本線は交流電化・七尾線は直流

*2:ラストの4号は新高岡まで行かないので損です