ぼくとー旅行記

どんなに些細な距離であっても、非日常がそこにあるならそれは旅行である。

散りゆくはまなす

初稿: 2023/05/19

 

はじめまして。ぼくとうと申します。

それでは記念すべき一記事目はこのタイトルで。時は遡って…

2016年3月9日 (高3)

高3の3月といえばいろんな意味で落ち着かない時期ですが、今回の旅はここから。

羽田空港の案内板

羽田空港の案内板

朝の羽田空港第2ターミナルです。before コロナですからね、各地に飛行機が飛び交っています。

それではNH53便で、いざ北の大地へ!機材はたしか、B777-200でした。

雲の隙間から雪山を見下ろす。この非日常な景色がたまりません。

眼下に広がる雪原が、北に向かっているという実感を強くします。飛行機の窓から見える雲海の水平線が大好きで…。

なんて空の旅に興奮していたらあっという間に新千歳空港です。飛行機って速いですね。まあだからこそ余計に、搭乗手続きとかのダルさが際立つんですが。ちなみにドラクエファンの私は、上空では「おおぞらをとぶ」(DQ3ラーミア曲)を必ず聞いています。

空港からは快速エアポート小樽行に乗車。新千歳空港はJRが乗り入れていて便利です。

せっかくなのでuシートに課金します。当時はまだ珍しかった、普通列車の有料指定席車両。でも回転するとロングシートになるような私鉄みたいなやつじゃなくて、ちゃんとした作りで快適でした。もはやグリーン車では?

目前に広がる銀世界に東京モンは興奮しつつ、海沿いを走る車窓はとても綺麗でした。

uシート

何故か指定券を買い間違えたため、札幌で一般車に追い出されたのは秘密

JR北海道721系@小樽駅

北の車両は飾り気が無く無骨で好きです

というわけで、まずは小樽で休憩。時刻も11時半、良い感じの時間です。

小樽の街並み

海鮮丼

小樽の街並み。時間に余裕があればもっと散歩したいですね

カモメ

凍えそうな鴎見つめて。泣いてはいません

雪降る小樽駅。そうそうこの景色だよ!

もとから雪がちらついていたのですが、お昼ご飯を食べて外に出たら結構降っていました。でも雪を見に北海道まで来たので無問題。むしろテンションアップです。

腹拵えをしたところで、再度快速エアポートに乗って札幌へ。久々の(ほぼ初めての)札幌、まだまだ時間はあるので観光をしていきます。

札幌市時計台

まずは日本三大がっかり名所こと札幌市時計台

がっかりがっかり言う割には、思ったよりがっかりしなくてむしろがっかりです。まあ、毎日見ていたら飽きるかもしれませんけどね。安田講堂みたいなもんです。

時計台内部も普通に公開されていて、特大歯車などは一見の価値ありです。

少年よ、大志を抱け。

続いて地下鉄に乗って羊ヶ丘展望台

のどかな丘から見下ろす札幌市街地は絶景です。羊ヶ丘自体はのんびりと時間が流れているのですが、眼下の都市部とのギャップが心に残りますね。自然と都会のコントラストが映える景色といえば、奈良の春日山が思い出されます。

まあ観光客はみんな、クラーク像の下でポーズを決めて写真を撮っていました。私ですか?私は独りで来ていて写真を撮る人も居ないので風景だけ……。

しかし、3月だというのに沢山雪が残っていて、ここでも北海道を感じます。

北海道庁旧本庁舎

さて、再び札幌中心街に戻ってきて、赤れんが庁舎。

日も大分傾いてきましたが、ライトアップが格好いいですね。これくらいの時間が一番映えるのではないでしょうか。

内部は赤絨毯がひいてある等「ザ・明治時代」という感じの威厳のある内装です。国会議事堂や海軍兵学校に通じるものがあります。建築のことはよく分かりませんけど。まあ、この中を歩いているだけで、不思議と偉い人の気分になって背筋が伸びます。

札幌駅で食べた札幌らーめん

せっかく札幌にきたので、晩御飯に札幌ラーメン。

凍えた身体に味噌が染みわたります。

「日本有数の都市、札幌なんだから、夜遅くても平気やろ」と東京の感覚で動いていたら、意外とお店が閉まるのが早くてびっくりしました。20時くらいには続々と閉まっていきます。マジか、時間を潰せねぇ。東京ってやっぱ別格なんですね……。

絶景に縮こまる思い

というわけで、遅くまで開いていた札幌駅のJRタワーに登ります。札幌の夜景を見下ろせる、オススメスポットです。

写真にもありますが、ここのトイレは是非使うべきですね。ご覧の通り、絶景を前に用を足すことができます。

開放的な夜景に包まれながら尿意から解放される解放感。是非味って下さい。男子トイレに入った瞬間、この光景を見てギョッとしたのは内緒ですが。

勿論、トイレ以外からの景色も絶景ですよ。入場料もそこそこかかりますが、その値に見合う光景が広がっているでしょう。

 

この旅のメインディッシュ

さて、こんな夜遅くまで札幌駅に居た目的はこちら。

夜行急行はまなす

JR最後の定期急行、そして最後のブルートレインです。

いや、JR化後に誕生した急行だし寝台車以外がメインということもあって、原理主義者からはブルトレに含まれないことも多いですけど、一般人からすれば区別もない気がするのでブルトレと呼びます。今回乗るのはB寝台だし。

北斗星も牽引していた青いDD51。コイツを見るのが夢でした。

 

はまなす」は札幌(22:00)~青森(06:19)を結ぶ夜行急行。開放B寝台の他に座席車やカーペット車(寝台料金不要で横になれる、サンライズのノビノビ的な車両)を連結しています。急行なので特急よりも特別料金も安価です。もはや特別急行より急行の方が特別な存在になってるんですけど……。

青函トンネルを通る寝台特急として有名な「北斗星」などが北海道新幹線開業(3/26)を控えて運行を終了する中、ひっそりと夜間に本州と北海道を橋渡ししていた本列車。しかしいよいよ北海道新幹線が開業して終焉を迎えるということで、大学入試の合格発表もまだなのに慌てて乗りに来たという訳です。

急行青森行。増結(増21号車)もしていて堂々たる編成

子供の頃から写真などで見て憧れていた「北斗星」。

それよりは格は落ちますが、青い汽車に牽かれて北の大地を駆け、ベッドに横になりながら津軽海峡を通過する。その夢を実現する最後のチャンスです。必然的に鼓動が速まり、シャッターを切る頻度も上がります。

謎のはまなすロゴ

ヘッドマークは車内の貫通扉で撮るといいです

それでは早速車内に乗り込んでいきましょう。結構ホームは寒いんです。

今回乗るのは2号車、B寝台です

せっかくの急行なので座席車もアリだったんですが、寝ながら青函トンネルを通る夢のために今回はB寝台で、ブルトレの残光を浴びてきます。

開放型B寝台の上段を取りました

鉄道博物館とかで見たことはありますが、実際に乗るのは初めてな開放型B寝台。写真のように、個室ではなく開放的な空間です。一つの区画に定員は4人。この金属のはしごで上段(右側)に上がっていきます。

もうすぐ廃止とはいえ、はまなすのラストランまで2週間近くあることもあってか、結局下段に人は来ませんでした。人が居たらちょっと気まずいの少し安心。まあ合席の出会いも、汽車旅の醍醐味なんでしょうけど…。

ちなみに上段向かい側にはお客さんが居ました。恐らく鉄オタでしょう。

「廃止直前になって慌てて乗りに来る(葬式鉄)のはどうなんだろう。日頃から乗ってあげないと」と話しかけられました。廃止前に乗りに来た自分にはなかなか刺さる言葉です。でもじゃあ今日乗っている貴方は一体……?確かにラストランだけ異常に混む、というのは複雑な気持ちではあります。現に、今日のはまなすは満員ではない訳ですし…。ま、おかげでチケットが取れたんで有難いんですけどね!

寝台(上段)の様子。座席としても使うのでシーツはまだかかっていません。

カーテンを閉めるとこんな感じ。意外とプライベートな空間

開放型とはいえカーテンを閉めれば意外と個室感はあって、むしろワクワクしますね。カプセルホテル的な感じ。個人的には夜バスよりよっぽど快適です。ただ狭いので荷物や布団などを落とさないように気をつけましょう。昔は3段ベッドもあったらしいですね。流石にそれはキツい気がします。

子供のように興奮していると、いつの間にか発車の時間。

旧い客車特有のキィキィ軋む音を立てながら、暗闇の中へと走り出していきます。

速度が乗ってきたところで流れるハイケンスのセレナーデ(車内放送のチャイム音)が旅情を誘います。

結構揺れますが、横になれば平気です。全然眠れますね。

ガタンゴトンと全身で感じながら、寝台列車の夢の旅路へ……。

 

午前3時の函館駅

とまあ興奮したまま眠れるはずもなく。

長時間停車する函館駅で起きて、機回しを見学することになりました。

いや、時刻表見てた時は「3時に機回し?流石にそんな時間に見るわけないでしょ」と思ってたんですけど……。

同じような人が多いのか、案外ホームに降り立つ人は多かったです。逆に言えばこれが、「普段使いの人は少ない」という証拠なんでしょうけどね……。

人々の夢を乗せて。夜中の寝台列車の魅力。

まあでも流石に寒いので、見学はほどほどにして寝台に戻ります。午前3時ですからね。

 

zzz...

zzzzzz...

うとうと眠って目が覚めると、そこは海底でした。真っ暗なので写真はありませんが。

窓には周期的に流れるトンネル内の蛍光灯の光。

トンネルに響き渡る重低音の走行音や風切り音。

寝ぼけていることもあってか、結構怖いです。そして長い。単調な光景・環境音が永遠に続くかに思われます。私は違いますが、閉所恐怖症の方にはしんどいかもしれません。

これを体験するために乗りに来たわけですが……百聞は一見に如かずって奴ですね。北斗星の旅も、存外優雅ではなかったのかも。ちなみに後日新幹線で通過しましたが、余りの速さにびっくりしました。

そんな青函トンネルにも、やがて光が射し込んできて……。

本州の夜明け

地上だ!本州に帰ってきました!!

喜びと共に、もうすぐ旅が終わることへの寂しさもこみ上げます。

窓際の補助席

ちなみに寝台車の窓際には、写真のような補助席がついています。寝台利用者の休憩用なのか、ヒルネ(夜明け後、通常の特急として利用すること)用の自由席なのか…。

朝、この座席に座って窓の外を眺めるのも乙なもの。

そろそろ他の乗客も目覚めて、活動音が聞こえ始める頃。

車掌さんの「おはようございます」という車内放送が、旅の終わりを一層実感させます。

 

函館~青森を引っ張ってくれた電気機関車

とうとう終点、青森着。

名残惜しいですが、お別れの時間です。

道中雪が降っていたのか、機関車のヘッドマークは一面雪で真っ白になっていました。ヘッドマークの役割は果たせていませんが、これぞ北国の機関車の雄姿、という感じです。

みんなで機関車を見送る

青森駅では早速はまなすの撤収作業が始まります。

まずはここまで引っ張ってくれた機関車とお別れ。青函連絡船の頃の名残か、海の方まで引き上げる線路が伸びています。

切り離された客車

悲しいけどこれ、老朽化なのよね

客車もかなりボロボロです。「老体に鞭打って」という状況。引退もやむなし、ですね。

それでも札幌~青森の約500キロという長距離を運んでくれてありがとう。

 

さて、旅もそろそろ終わりです。東京に向かうとしましょう。

「新」な青森

まずは一駅隣の新青森駅

お前ももうすぐ引退よな

散りゆくはまなすとは反対に、北海道新幹線開業の活気を感じます。

あとは剥がすだけ

この北海道新幹線の開業と共に、はまなすは散る。何とも複雑な心境です。

まあでも便利になるならOKか。

はやぶさ12号で東京へ

というわけで東北新幹線に乗って東京に戻りました。まあ家まで帰ると間に合わないので、途中大宮で降りてマックで大学の合格発表を見たんですけど。

これにて札幌→東京のはまなすの旅は終了です。

 

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ブルートレインが無くなっていくのは寂しいですけど、その車両の老朽化・利用率の低さを肌で実際に体感すると、駄々をこねる訳にはいかないな、という思わされました。現実は厳しい。

とはいえ、はまなすのように「最終新幹線に接続して、新幹線の走れない夜間に走行し翌朝その先の都市に着ける」っていう寝台列車は需要あるんじゃないんですかね?まあその「新幹線の走れない夜間」は青函トンネル(北海道新幹線の線路)も通れないって問題があるんですけど……。

そんな限界な旅程を組む人は居ない?需要が無いから寝台特急は廃れた??

それはそうかもしれません。ふむ、難しい。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。