ぼくとー旅行記

どんなに些細な距離であっても、非日常がそこにあるならそれは旅行である。

若者の四国(第一国)―本四備讃・予讃・内子

初稿: 2023/12/24

2017年8月18日 (B2)

 もう5年も前の話ですが、旅行の楽しさを再認識して、今に至るまで定期的に旅することになった、きっかけの旅行の話を。

若者限定四国フリーきっぷ

 今回のおトクなきっぷは、「若者限定四国フリーきっぷ」。25歳以下なら9800円(当時)*1で3日間、特急を含む自由席乗り放題という破格なきっぷです。

www.jr-eki.com

 購入には身分証明書のコピーが必要ですが、四国でしか取り扱ってないのにきっぷをレターパックで送ってくれるなど、手厚いサポートが嬉しいです。これは25歳になる前に使うしかない。ということでJR四国を乗り潰しましょう!

使用済みのきっぷ。不正防止のため氏名が記入されます。
快速マリンライナー9号:岡山(0755)~坂出(0834)

瀬戸大橋線の顔

本州から四国への玄関口、岡山駅からスタートです。流石に岡山まではフリーエリア内に入らないので、岡山~坂出のきっぷは別途購入します。きっぷの効力的には児島スタートでもいいんですが、次の列車は坂出から乗りたかったので、マリンライナーで坂出まで乗り込みます。

瀬戸大橋から見る瀬戸内海は最高です
いしづち3号:坂出(0902)~松山(1115)

四国っぽい電車

 坂出駅改札で「若者限定四国フリーきっぷ」と年齢確認証を呈示し、使用開始の入鋏をしてもらいます。いよいよ四国一周の旅のスタートです。若干時間がかかるので、時間に余裕はみておいた方がいいと思います。

不安になる貫通顔

 ではいきなり特急に乗っていきましょう。記念すべき第一弾は予讃線特急「いしづち」です。JR四国が誇る振り子式電車8000系のカッコいい流線形の先頭車…ではなく貫通型の先頭です。まあ考えてみれば当たり前ですが。これはこれで前面展望できて良いんですよ。

ぶ…ぶつかる……!

 列車は予讃線を飛ばして、先ほど通過した宇多津へ到着。ここで先頭方に岡山から来た「しおかぜ」を連結します。そう、宇多津以東からいしづちに乗っておくことで、前面展望でこの連結作業を満喫できるのです……!JR四国の特急は岡山と高松の2つの拠点があるので、2方面への分割・併合が盛んに行われるのが四国特急の魅力ですね。宇多津と多度津、どっちなのかよく分かりませんけど……。

もう前面展望はできませんが、美しい瀬戸内海が広がります

 思ったより連結時の衝撃はありましたが(ご褒美ですが)、一体となったしおかぜ・いしづちは振り子式車体を活かして予讃線を快走します。海と国道と並走して走る感じ、九州を思い出させます。

 この8000系、かなりの高性能で振り子もさることながら本当は160 km/hくらい出せるらしいですが、結局は通常の特急と同じ130 km/h止まり*2四国新幹線なんかよりも、この予讃線の高速化の方が現実的なのではないでしょうか…。まあ大阪(・東京)まで乗り換えなしで行けることが大事なのかもしれませんが。私としては8000系が山陽本線を爆走して大阪に乗り入れる光景を見たいですけどね。冗談はさておき、対関西だと空路・高速バスに勝てない…。

終点松山

 2時間の旅もあっという間に、終点松山駅に到着です。景色が開けていたからか、あまり振り子の傾斜は感じませんでした。流石は名車8000系、年季は感じさせますが快適な旅でした。

8000系といえばこの顔

 四国一の都市・松山。ターミナル駅の一つでもあり、乗り入れる列車も多様で、見ていて飽きません。

これは連結せずに、縦列駐車しているだけです

 遠くには新鋭8600系*3の姿が。費用対効果を考え、振り子式ではなく空気ばね式の車体傾斜装置を備えます。コスパを考えるのは当然ですが、JR東日本*4といい北海道*5といい、振り子車両が消えていきそうに思える時期でした。後に2700系やら新型やくも・しなのが発表され、杞憂と分かりましたが。

四国特急3世代
松山

松山駅。張り巡らされた路面電車用架線が素敵

 さて、一日目は愛媛県松山市を味わいます。松山市といえば路面電車。そこでまずは伊予鉄市内電車1Dayチケット*6を購入。中心街はJR松山駅から少し離れてるんですよね。城跡や県庁を中心とする繁華街とJRの駅とを結ぶ路面電車。地方都市あるあるです。

伊予鉄名物・鉄道同士の交差

 早速路面電車を乗り回して、松山市駅へ。燃費の悪そうな歴史を感じさせる車体と塗装が最高ですね。車内の床が木の板張りで興奮しっぱなしでした。

伊予鉄といえばこの車両、この塗装

 近辺で腹拵えをして再び路面電車へ。おしゃれで一人で入りづらかったですが美味しかったです。

愛媛といえば鯛、のラーメン

 いよいよ松山市の中心地へ。まずは「坂の上の雲ミュージアム」を訪れます。昔に行ったこともあったのですが、当時はまだ坂の上の雲は読んでいなかったので改めての訪問です。背景知識があると、より楽しめました。坂の上の雲を読んだことがある方は、訪れて損はない施設だと思います。読んだことがない方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。歴史解釈は諸説あるとはいえ名作ですよ。

坂の上の雲

 続いては中心地にそびえる松山城天守閣が遺る数少ないお城です。ロープウェイがあるらしいですが、経路の都合もあり徒歩で登ります。……が、荷物を背負ってる上、真夏の日射しが体力を奪います。

城攻めじゃあ

少し身体をクールダウン

 汗ダラダラになりながらも登る天守。しかしそこから望む景色は圧巻の一言でした。思わず声が出てしまうほどに。

松山を統べる者の景色

 眼下に広がる松山市街。遠くに望む碧い海。民草の営みと、それを支える自然とを一望できるこの景色こそ、統治者の見るべきものなのでしょう。建築当初と街の様相はがらりと変わったでしょうが、その発展を見守ってきた城の歴史を感じます。まあそんな近代・現代に思いを馳せてしまうのは、坂の上の雲ミュージアムの影響かもしれませんが。

城内の暗さが、これまた眺望を引き立てます

 そんな小難しいこと考えたところで、美しい景色を前に言葉を失ってしまうのですがね。見れば言葉に出来ないくらい感動するので、松山を訪れたら是非松山城からの景色を味わって下さい!

城も路面電車も近代ビルも、全てが松山
宇和海21号:松山(1632)~伊予大洲(1705)

宿泊したスカイホテル

 宿のチェックインが出来る時間になったので、チェックインしてシャワーを浴びてから、本日の後半戦に挑みます。

特急宇和海21号

 高松から宇和島まで予讃線らしいですが、実際には松山で系統分離されています。電化区間伊予市までだしね。昔は通しの特急もあったそうですが…。

 という訳で松山駅から、予讃線特急「宇和海」に乗車します。JR四国の誇る、振り子式気動車2000系での運転です。車内はガラガラ…と思いきや、意外と乗客がいました。地元の足になっているのですね。

予讃線内子線(特急)

 特急は内子線*7を通って揺られること約30分。予讃線と合流する伊予大洲駅に到着。今日はこちらで下車します。

予讃線伊予大洲(1709)~松山(1830)

 続いて、対岸で待ってくれていた普通列車にて、海回りの旧線「愛ある伊予灘線」に乗って松山へ帰ります。時間帯が時間帯だからか、車内は部活帰りの高校生で賑わいます。座れない程ではありませんでしたが。

伊予灘に沈みかける陽

 内陸を短絡する内子線とは異なり、旧線は海沿いを走り、ロングシートの車窓からは美しい海が見渡せます。この海に沈む夕陽は美しいらしいですが、少し時間が早かったため残念ながら絶景は味わえず。それでも傾く陽に煌めく水面は美しかったです。そんな光景も地元民にとっては見慣れたものなのか、みな眩しそうにカーテンを降ろします。疲れの漂う車内に射し込む西日と響き渡るディーゼル音が、地方の生活感を醸します。

 海を眺めながら遠回りの旧線を各駅に止まって約一時間半、汽車に揺られて黄昏の松山駅に帰って参りました。

また路面電車
いよてつ高島屋大観覧車「くるりん」

くるりん」の位置(真ん中下部)で「入鋏」されます

 さて、この路面電車一日乗車券には、観覧車のチケットが付属しています。なのでやりましょう、夕暮れの一人観覧車。松山をとことん味わってやります。

ロマンもクソもないぼっち観覧車

 松山市駅高島屋、最上階に登って係員にきっぷを見せます。他に客はほとんどいないので恥ずかしさはそこまでです。対岸の空虚な座席を眺めつつ、ゴンドラは高度を上げていきます。

夕闇の松山市

 そうは言うものの、夜景が普通に綺麗なのが悔しいところです。相手がいれば、さぞかしロマンチックなゴンドラになることでしょう。

松山城のライトアップも良い感じでした

 というわけで松山のホテルに戻り、四国の旅一日目は終了です。中編第二話に続きます。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

bokutou-travel.hateblo.jp

*1:現在は12000円

*2:踏切がない等、線路側の条件を満たさないと安全上160 km/h走行はできない

*3:2014年デビュー

*4:E353系あずさ

*5:キハ261系; 後に停止

*6:500円; 当時

*7:予讃線のバイパス新線